受験のため仮引退中でしたが、合格したので復帰しました。小説をはじめとしメイプル記事も更新されます。


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 今回はちょっと遊びっぽい(?)話です。ではスタート。



 朝日が中央ダンジョンのかげから見える頃、マヤの家に運ばれた銀鷹が目をさました。

「うっ・・・ここは・・・?」

体の芯まで響くほどの一撃を受けた彼は胸を押さえながらゆっくりと起きた。

「ここは私の家です。もう大丈夫ですか?」

マヤが丁寧な口調で言い、銀鷹は大丈夫だと言った。

「あっ・・・珠蟲姫さん、途中から何も覚えてないんだが、俺は一体何をしたんだ?」

銀鷹がマヤの近くにいた珠蟲姫に聞いたが、横にいたミストが、

「知らない方がいいと思うぜ。俺が止めてなかったらどうなってたか・・・」

少し怒ったような口調で言った。

「そ・・・そうか。ところで君は誰なんだ?」

銀鷹の問いに、ミストは、

「俺は姫さんの友達でドラゴミストっていう者だ。まあよろしくな。」

不安から珠蟲姫の恋人といわなかったことを少し悔やみつつもそう自己紹介した。

「こちらこそ、よろしく。」

銀鷹はそう言って、ベットの脇にあった金色の弓、アールンを取って立ち上がった。

「そうだ。姫さん、俺と一緒にカニングシティのバーへ行かないか?」

ミストが誘うと、悪いけどあの街はあんまり好きじゃないと珠蟲姫は言った。

「じゃあ、銀鷹・・・だったな。一緒に行こうぜ。」

銀鷹の方を向いてミストが言った。彼は頷いて、マヤの家を出た。ミストは家を出る前、

「姫さん、気が変わったら来てくれよ。待ってるからさ。」

そういい残して走り去って行った。

 「私は行った方がいいと思うけど・・・」

ミスト達が去ってすぐに、マヤが口を開いた。

「でもあそこ、あんまり好きじゃないんだよね・・・」

複雑な表情で珠蟲姫が言った。どうして?というマヤの言葉に、

「デニスさんがビシャスプラントを倒した場所と、あの街は似てるの・・・だから見てると、なんだか悲しくなってきて・・・」

珠蟲姫はあの放棄された工場の中を思い出しながら言った。マヤは少し悩んだ後、

「でも、そんな悲しみを断ち切るのも必要だと思う。ヘレナさんが言ってたわ。弓使いに必要なのは、何事にも動揺しない心だって。」

そう言った。珠蟲姫は確かにそうねと言い、家の庭に出た。草を食べてのんびりしていたミストの猪に乗って、

「カニングシティまでお願い。」

猪の頭を撫でながら言った。猪は大きく頷いて、走っていった。

 タクシーから降りたミストは、銀鷹をバーへ案内しようとしたが、

「ちょ・・・ちょっと待ってくれ。」

かなりあせりながら銀鷹が言った。

「俺はやっぱり、外で彼女を待つよ。先に入って飲んでてくれ。」

バーに案内する役も必要だろうと思い、ミストはその言葉に頷いた。そしてバーへと入っていった。

「・・・実はワインを5年前以来飲んだことがないなんて言えないからな・・・」

銀鷹が夕焼けの空を見て呟いた。

 バーの中は、前とあまりかわっていなかった。カウンターにはダークロードがいた。

「おお、ミスト君。よくきてくれた。じゃあ早速、最近作ったワインを出すよ。」

ダークロードの言葉にミストは頷いて、席に座った。慣れた手つきでダークロードはグラスにワインを注いだ。綺麗な青色をしたワインだった。

「綺麗だな・・・どうやって作ったんだ?」

ミストの言葉にまあ気にせずに飲んでみろとダークロードは言った。グラスを持って軽く振り、ゆっくりと飲んだ。グラスをカウンターに置いて、

「これはいいな。甘すぎないし、何杯も行ける感じがする。」

そう感想をもらした。ダークロードはじゃあもう一杯と言い、グラスに再びワインを注いだ。

 しばらくして、銀鷹の所に猪に乗った珠蟲姫が来た。

「おお、珠蟲姫さん。一人じゃ迷うと思って待っていたよ。」

銀鷹の言葉に、珠蟲姫はどうもありがとうと微笑んで言った。そして、二人はバーへと入っていった。

 バーの中に入って、銀鷹は驚いた。カウンターの上には、ワインの入っていた瓶が10本近く置かれていたからだ。

「お、姫さん。やっと来たか。」

少し赤い顔をしたミストはそう言い、手招きした。珠蟲姫は戸惑いつつも、彼の隣に座った。そして銀鷹はミストの隣に座った。相当な量飲んでいるはずなのに、アルコール特有のにおいはまったくミストからしなかった。

「お、君は確か、ミスト君の友達だね。知ってると思うが、俺はダークロード。このバーのマスターで、盗賊達を導く仕事もしている。」

バーの雰囲気からかなり浮いている、珠蟲姫を見てダークロードが言った。

「あ、それと、こいつは俺の友達の銀鷹だ。」

自分の左となりにいる銀鷹をちらりと見てミストが言った。

「じゃあ早速、これを飲んでみてくれ。」

ダークロードはやや上機嫌な様子で言い、2つのグラスに青色のワインを注いだ。そして銀鷹と珠蟲姫の前に置いた。珠蟲姫が慎重にそれを見ていると、

「大丈夫だって。水みたいなもんだから、一杯飲んでみろよ。」

横からミストが言った。若干酔っているせいか、いつもの彼とは少し違っていた。珠蟲姫はその綺麗な色を見て、まあ大丈夫だろうと思ってグラスを回復した右手の触手で掴み、飲んだ。

「おいしい・・・今まで飲んだどんな水よりもおいしいわ。」

始めて感じる、アルコールの入った飲み物特有の感触を感じて珠蟲姫が言った。

「じゃあ、もう一杯いってみよう。」

ダークロードはそう言って、珠蟲姫のグラスに青色のワインを注いだ。

 そんな飲んでは注ぎ、飲んでは注ぎの状態がかなりの間続き、ミストは瓶20~30本、銀鷹と珠蟲姫は二人あわせて10本ほど飲んでいた。外はもう昼になっていた。

「あんた・・・なかなか飲みっぷりがいいな。これから毎日通ってくれよ。」

ダークロードがすっかり顔が赤くなった珠蟲姫に言った。珠蟲姫はうつろな視線を向けながら、

「ええ・・・そうさせてもらうわ・・・」

かなり酔いが進んでいる様子で言った。隣にいた銀鷹はそれなりにワインを飲んでいたが、顔色一つかわってなかった。

「珠蟲姫さん・・・もうそろそろ帰ったほうが・・・」

かなり(色んな意味で)危ない状態の珠蟲姫を横からゆすって銀鷹が言った。すると珠蟲姫はふせていた顔をあげて、左手で乱暴に彼の手をふりはらい、

「うるさいわね!あんただけ先に帰ってよ!」

そう怒鳴った。かなり酒臭い息を銀鷹は感じた。これはもうだめだと彼は判断し、席を立った。

「じゃあ、俺はこのへんで。」

誰かに言い残して、バーを出て行った。

 マヤの家になんとかたどりついた銀鷹は、

「マヤさん、今日は二人とも帰ってきそうにないです。」

簡潔に、そう言った。

 銀鷹が去って1時間ほどして、なんとか正気を保っているミストが、

「うぐっ・・・もう飲めない・・・」

口を押さえてそう言った。すると横で、ほとんど眠っているように見える珠蟲姫が顔を上げて、

「ちょっと!私を置いていくつもり!」

ミストに言った。

「い・・・いや・・・そういうわけじゃないんだが・・・」

かつてない彼女の迫力におびえながらミストが弁解した。すると珠蟲姫は立ち上がって、彼の後ろに回った。触手が、彼の首に絡みついた。

「いい?絶対に私を置いていくなんてことは考えないように!わかった!?」

どちらかというと脅すような口調で珠蟲姫が言った。ミストは声も出ないので何度も頷くと、急に触手がほどかれた。

「わかればいいのよ。さあ、どんどん飲みましょ!」

まだ飲むのかとミストが思った時、珠蟲姫が地面に突然倒れた。カウンターの上にはダークロードがいた。

「この子にこれ以上飲ますのは危ないな・・・多少手荒いが、こうするしかなかった。」

片手にカブトムシのような形の手袋、ビートルをつけたダークロードが言った。ミストはほっと一息ついて、

「ミスト君、この子は確か、猪に乗ってきていたな。その猪に君とこの子を乗せて、マヤの所まで送ろう。」

素早くビートルを外し、ダークロードは珠蟲姫を抱えて外へ出て行った。ミストもふらふらと歩いていった。外にいた猪に珠蟲姫とミストをダークロードは乗せて、

「じゃあ、ヘネシスのマヤの家まで送ってくれ。」

猪に言った。ミストの猪は、ゆっくりと走り出した。ダークロードはふっとため息をはいて、

「あんな酔い方をする人は始めてみたな・・・」

そう呟いた。



 第11回終了です。次は久しぶりの誠の話です。
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by jwpwm424 | 2007-05-30 20:58 | 『のんびりメイプル生活』

第10回 召喚術の覚醒

 ワイバーンに襲われたミストはどうなるのか!?な感じの第10回です。ではスタート



 飛び掛ったワイバーンの何匹かには、彼の放ったシャイニングレイの一撃が当たった。それを察知したワイバーン達は風を纏って飛び掛った。そして、彼の右腕を鋭い爪で地面に押さえつけた。その右腕にはドラゴンヘッドが握られていた。

「くっ・・・こんなことをするなんて!」

ミストは予想外の出来事に驚きつつ、杖に魔力をこめようとしたが、腕の先に魔力の元、マナが行かなかった。ワイバーンの爪にマナは吸収されていた。彼の視界をワイバーンが埋め尽くした。一斉に、襲い掛かった。ミストの悲鳴が、冷たい風の流れる洞窟に響き渡った。

 気絶したミストから1匹のワイバーンが杖を取り上げ、

「こいつはどうする?」

ワイバーン達にだけわかる言葉で仲間に聞いた。

「マナを全部吸い取って、残りは食おうぜ!」

岩の近くにいたダークワイバーンが言った。

「待て・・・そいつを殺すな。」

その低い声に、一斉にワイバーン達がホーンテイルの屍がある瓦礫の方に向いた。

「ホーンテイル様!気がついたのですか!」

羽をたたんで、瓦礫の前にひざまずいたワイバーンが言った。

「その男を・・・こっちに持ってこい。」

ホーンテイルの言葉にワイバーン達は慌てて気絶したミストを運んだ。瓦礫の前に落とした。

「この男には、苦しめられた。掴みかけた我々の栄光を・・・踏みにじった。そうだろう?」

ホーンテイルの言葉に、ワイバーン達はそうだそうだと言った。

「こいつにも、味わってもらおう・・・大切な物を失う悲しさを・・・。」

瓦礫の中のホーンテイルはそう言い、魔力を放った。仰向けになった彼の、胸元にかけられたペンダントに邪悪な魔力が注がれた。

「この男の、洞窟の中の記憶は消しておいた。今すぐこいつを・・・外へ放り出せ。杖も一緒にだ。」

少ない力を使ったため、途切れているホーンテイルの声を聞いてワイバーン達は洞窟の外へと向かった。ミストと、彼のドラゴンヘッドを掴んで。

 しばらくして、ミストが目を開けた。

「う・・・あれ・・・?なんで洞窟の前にいるんだ・・・?」

乱暴に叩きつけられたせいで痛む頭をさすりながら、記憶を辿った。

「そうだ!ドラゴンハートを探しにいったんだ。」

ラウルから言われたことを思い出し、杖を取った。すると空いていた道具袋からドラゴンハートが零れ落ちた。

「あれ・・・あ、そっか・・・ドラゴンハートはもう取ったんだった・・・・」

ミストはそう解釈して、赤く光るドラゴンハートを道具袋に入れてラウルの元へ走った。

 「おお、ドラゴンハートをとってきたのか・・・しかしどうやって・・・」

ラウルはそう言ったが、とりあえずできるだけ早くスキルを頼むとミストは言った。

「わかった。じゃあ君にこの力を渡そう。」

ラウルはドラゴンハートの前に立ち、目をつぶった。彼の下に金色の魔方陣が描かれ、胸の前に金色の楓の葉のマークが浮き出た。そこから出た光が、ミストの中に吸い込まれた。

「これで・・・いいのか?」

ミストが聞いて、ラウルが頷いた。

「ただし、このスキルは君の潜在能力で決まる。わかったな?」

いまいちわからないが、とりあえずミストはわかったと言い、リプレへと走った。空は、オレンジ色に染まっていた。

 戦いのコツなどを銀鷹から聞き終わった珠蟲姫は、銀鷹に礼を言って立ち去ろうとすると、

「ああ、ちょっとまってくれ。このテントから、星でも見ながら何か話さないか?」

やや慌てながら銀鷹が彼女を呼び止めた。珠蟲姫はいいですよと言い、テントに入った。長い話を聞いているうちに、寝息を立てて眠った。

 珠蟲姫が寝たことを確かめると、銀鷹はゆっくりと立ち上がり、

「やっと寝たか・・・さぁて・・・」

何かを企んでいるような笑みを浮かべながら、寝ている彼女の前に近寄り、珠蟲姫のタキシードの一番上のボタンを外した。続いて2番目も外した。銀鷹の目は、怪しい赤色に光っていた。片手には、黒く光る小さなナイフが握られていた。と、その時だった。白く光る矢が、彼のすぐ前を通り過ぎた。

「誰だ!」

敵意をむきだしにして銀鷹が叫んだ。テントの入り口には、ミストがいた。

「やっぱりそういうつもりだったのか!許さんぞ!」

ミストの言葉に、黙らせようと銀鷹が4本の矢を放った。ミストはそれを魔法で作られた盾、エスターシールドで弾き、ドラゴンヘッドを両手で持った。魔力を空中に込め、放った。聖なる力の塊が龍の形を取るスキル、サモンドラゴンだった。その小さな龍は、魔法の塊を銀鷹に放った。しかしそれは、レビアンズを騙したスキル、パペットの藁人形だった。

「何っ!」

ミストが後ろを振り向くと、口元に笑いを浮かべた銀鷹がいた。4本の矢が放たれた。その矢を、神速の速さで飛んで来たサモンドラゴンが受けた。青色の光が飛び散り、ドラゴンが地面に落ちた。

「くっ・・・俺の中にある、龍の力・・・目覚めてくれ!」

ミストはドラゴンヘッドを高く上げ、ラウルから教わった謎のスキルの発動を願った。その時、杖の先端から魔力が放出され、倒れたサモンドラゴンを包み込んだ。包み込んだ光は球の形になり、サモンドラゴンのそれより大きい龍の形をとった。

「なんだこれは・・・!」

銀鷹がその聖なる光に目をくらました時、ゆっくりと幻の龍ができあがった。黒い角に、透き通るような青色の目、赤い体に羽があった。聖なる力を極めた魔法使いにだけできる、幻竜の召喚だった。

「いけぇ!」

ミストが杖を振って指揮すると、バハムートは口をあけた。サモンドラゴンをはるかに超える力が撃ち出された。銀鷹は少し吹っ飛んで、草むらの中に倒れた。ミストがそこへ駆け寄ると、彼の胸のところから闇の力の欠片が出ていた。ミストがそれを握ると、欠片は浄化され消えた。

「そうか・・・こいつも闇の力に支配されてたのか・・・」

襲撃を受けたリプレで見た、赤く目を光らせるレッドドラゴンを思い出して言った。

 すぐにミストは珠蟲姫に近寄り、起こした。

「んむ・・・あれ?ミストさん、どうしてここに?」

触手で目をこすりながら起きた彼女は、テントの中を見回した。銀鷹はいなかった。

「姫さんに話してた弓使いの奴が、姫さんに何かしようとしてたから俺が止めに入ったんだ。どうやら闇の力に支配されてたらしい。」

簡潔にミストがそう説明すると、何秒かの静寂の後、

「そう・・・あ、それとミストさん、昼間はごめんね。」

そう言って心配そうに彼女を見るミストの手を握った。ミストは頷いて、杖を片手で軽くふった。幻竜が中へ入ってきた。

「これは・・・?」

珠蟲姫が聞くと、

「俺が召喚できるようになった、魔法の龍だ。かわいいだろ?」

ミストはそう説明して、龍の首の下を軽くなでた。ミストの近くに龍は降り、珠蟲姫に軽く頭を下げた。

「ほんとね・・・名前はなんていうの?」

彼女の問いに、そうだなとしばらくミストは考え込み、

「バハムートって名前にしよう。それでいいよな?」

幻竜、バハムートの頭をなでて聞いた。龍が理解したのかはわからないが、その愛くるしい様子を見ていると、銀鷹を打ち倒した慈悲なき一撃を放ったとはとても思えなかった。珠蟲姫も立ち上がって、龍の背中に乗ってみた。バハムートはゆっくりと羽を広げ、近くの草むらを飛び回った。

 楽しんでいる珠蟲姫を見て満足気に頷くミストは知らなかった。ホーンテイルの仕掛けた、悪魔の罠を。思い出のつまったペンダントにこめられた、最愛の人を葬る魔術を。



 第10回終了です。
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by jwpwm424 | 2007-05-24 20:51 | 『のんびりメイプル生活』

第9回 龍の野望

 今回は、複雑(?)な話の最初です。ではスタート



 銀鷹と珠蟲姫は、キノコ神社からヘネシスへと向かった。そして、街の近くの草むらに野営用のテントをはった。

「よし・・・これで何日も練習できる。じゃあまず、この弓を使ってくれ。」

銀鷹はそう言い、彼の持っている金の弓、アールンの色が違うものを彼女に渡した。

「まずは・・・君は見たところ人間じゃないようだが、スキルは使えるのかい?」

銀鷹の問いに、残念ながら使えないと言った。

「そうか・・・でも、魔力はあるんだね?」

珠蟲姫は頷いた。

「じゃあ、その魔力を使えばいい。まず、弓使いに備わる一撃必殺の力、『クリティカル』について教えよう。」

銀鷹はそう言い、説明を始めた。

 ミストは、エリニアまで行って、やはり回復を待ったほうがいいんじゃないかと思い直し、ヘネシスへ戻った。そして、ふらふらと自分の作った家に入って窓から外を眺めた時、

「ん・・・?」

街の外のくさむらに、前はなかった簡易テントがはられていることに気づいた。これは怪しいと思い、家を飛び出した。

 草むらの、隠れるためにあるような高い草に身を隠し、隙間からテントの前を見た。すると、そこには珠蟲姫と、デニスと同じ、G,ウィングキャップをつけた青年がいた。

「なんだあいつ・・・」

ミストは怒りを覚えつつも、その様子を観察した。

 「・・・とまあこんなわけだ。じゃあ早速、実践してみよう。」

銀鷹は短い説明を終わらせて、彼女の横に立った。そして、弓の弦を持つ彼女の触手を握って、

「そこだと、狙いが安定しない。もう少し下を握り、両手が直線上にくるようにすればいい。」

そう言って彼女の触手を軽く下に下げた。

 「・・・!あいつ何やってんだ!」

ミストは思わず大声で叫びそうになったので、慌てて小声でそう言った。彼に2人の会話は聞こえないので、ミストから見ると銀鷹が彼女の手を握っているとしか見えなかった。ミストは今にも飛び出しそうな勢いで、ドラゴンヘッドを握っていた。

 珠蟲姫の矢が、草むらの中に設置された的の中心を射抜いた。

「おお、すごいね。さっきも言ったように、敵の弱いところを推測し、そこを狙うのが大切だ。矢の威力はあまりつよくないから、クリティカルの技術が勝負を決める。わかったかい?」

銀鷹の賞賛と問いに、珠蟲姫は微笑みながらわかりましたと言った。

「じゃあ次は、ちょっと息抜きをしよう。テントの中に入ってくれ。」

銀鷹がそう言うと、珠蟲姫はテントの中に入っていった。

 「あいつ・・・姫さんに何するつもりだ!」

ミストは耐え切れず草むらから飛び出し、テントのすぐ近くに隠れた。そして、そっと中を覗いた。中では、二人が楽しそうに話していた。

「姫さん!」

思わずミストはテントの入り口に立って叫んだ。

「なんでそんな奴と一緒にいるんだよ!」

彼がそう言うと、銀鷹はむっとして、

「失礼な。君も、大仏の近くにいた奴の仲間か?」

そう聞いた。

「そんなことはしらん!とにかく今すぐ姫さんをはなせ!」

ミストは怒りに身を任せて怒鳴った。すると珠蟲姫が立って、

「ミストさん!いい加減にしてよ!」

高い声で怒鳴った。するとミストは、それが自分を拒否する言葉だとうけとった。何も言わずに、ヘネシスの方へと全力で走った。

「ミスト・・・さん・・・?」

予想外の行動に出た彼の背中を、珠蟲姫はテントの入り口から顔を出してみていた。

 ミストは、何も考えずにひたすらエリニアへと走っていた。エリニアの街の上部まで進んだところに、星の欠片が等間隔に落ちているのに気づいた。ミストはそれを伝って、エリニアの北の森のある方へと進んだ。

 星の欠片が途切れた所には、緑色をした小さな種が置いてあった。そして、その前には白い渦が巻く大きな穴が開いていた。

「この中に入れってことか」

ミストはそう言って、種を取って中へ入った。空間を飛び越す力に必死に耐えながら、渦の中をとんでいた。

 気がつくと、ミナルの森にいた。すぐ後ろには、前はなかった、白い渦をまく穴があった。

「なるほどな・・・リプレへワープする穴か。しかし一体誰が・・・」

ミストはそう言いながらも、船で行く手間が省けたと喜びながら街へと走っていった。穴の影から、誠が顔を出した。

「っふふ・・・ミストもそろそろ四次転職してほしいからな・・・じゃあスターフィクシのみんな、ミストを森に誘導してくれ。」

誠は自分の後ろにいたスターフィクシ達に言った。

 ミストはまず、タタモに会った。

「おお、ミスト殿ではないか。今日は何のようできたんじゃ?」

タタモは驚きつつも聞いた。

「四次転職をさせてくれないか?」

ミストが聞くと、タタモは紹介状を書いて、彼に渡した。

「それを、森の中にいる賢者様に見せなさい。きっと、ミスト殿の力になってくださるだろう。」

タタモの言葉にミストは礼を言い、森の中へと走った。

 森の中にスターフィクシが撒いた星の欠片を伝って、ミストは大きな花の咲く森の聖域にたどり着いた。その花の中央に、杖を持った賢者がいた。

「賢者さん!四次転職させてください!」

ミストの言葉に瞑想をしていた賢者は振り向き、ミストの出した紹介状を取って読んだ。

「なるほど。あなたがホーンテイルを倒した勇者ですか。いいでしょう。私の力で、あなたの能力を更に強化しましょう。」

賢者はそう言い、杖に力を込めた。その力がミストの中に吸い込まれ、一瞬、体が金に光った。

「これであなたは、最強のスキルを使えるようになりました。しかし、私の渡すスキルブックには、すべてのスキルは書かれていないのです。」

賢者の言葉に、どうしてですかとミストは聞いた。

「真のスキルを学ぶには、自らの力を各地にいる人々に見せなければだめなのです。そうすれば、自然とスキルが増えていくでしょう。」

賢者の意味深な言葉にミストはとりあえず頷いて、せめて一つだけでもスキルを覚えるヒントをくださいと言った。

「そうですね・・・ノーブルドラン達の治癒にあたっている、ラウルを尋ねてみるといいでしょう。道中にモンスターは出ないと思いますが、気をつけてください。」

賢者の言葉にミストは頷き、龍の巣へと走った。彼の中には、自分から恋人を奪った男への復讐しかなかった。

 少しづつ緑が戻りつつある龍の巣のあちこちには、ノーブルドラン達が木を植えていた。そこを抜け、高台にいたラウルを訪ねた。

「おお、よくきたな。見ての通り、森は昔の姿を取り戻しつつある。君も手伝いにきてくれたのか?」

ラウルの問いに残念ながらそれは違うと言い、スキルを教えてくれといった。

「ほう・・・そのことを知っているのか。私は遠征隊に入り、ホーンテイルの部下達を斬った頃から、奴らの部下の心臓・・・つまりドラゴンハートを使えば魔力だけで作られた龍を作れるということを閃いた。なぜそうなったのかはわからない。運命・・・というものだろう。君にそのスキルを教えることはできるが、残念ながらもう敵のドラゴンはいない。無論だが、ノーブルドラン達の心臓を渡すわけにもいかないぞ。」

ラウルは遠くを見るような目でそう説明した。ミストはしばらく考えて、

「じゃあ、ホーンテイルのいた洞窟にはいってもいいか?あそこならワイバーンの死骸とかが残ってるはずだからな。」

ミストの言葉にラウルは目を細めて、

「構わないが・・・私達はあれからあの洞窟には入っていない。邪悪な気配がまだかすかに残っているからな。だから何か異常を感じたらすぐに出て来い。いいな?」

ラウルのやや心配そうな言葉に大丈夫だと言い、聖域ナインスピリットの森の近くにある生命の洞窟へと、ゆっくりはいっていった。

 中の様子は、前とまったく違っていた。綺麗に光っていた水色の鍾乳石などはすべて吹き飛び、黒い煤があちこちについていた。ところどころに、リザードマンの黒焦げの死体があった。とりあえずそれを無視し、しばらく進むと、カタン、という音がした。

「ん・・・?なんだ今の音は。」

ミストは警戒し、大きな岩の陰に身を潜めた。しかし、気のせいのようだったので、また歩き出した。

 かつてホーンテイルが首だけを出していた巨大な空洞は、壁が吹き飛んでいた。ところどころにワイバーンの死体があった。ミストはそこにしゃがみ、ドラゴンヘッドを振り下ろした。彼の魔力に反応し、死体の中から赤く光る心臓のような石が現れた。

「これがドラゴンハートか・・・」

ミストはその宝石のような石を道具袋にしまい、ごつごつとした道を進んでいった。すると、天井のとても高い広場のような場所に出た。

「ここはまさか・・・」

ミストはそう言って、前を見た。紋章が刻まれた岩の積まれた場所の近くに、ホーンテイルのものと思われる銀の角の欠片がちらばっていた。ここは、かつてホーンテイルとの激戦を繰り広げた場所だった。と、その時、

「キアアッ!」

明らかに人間のものではない高すぎる鳴き声が後ろから聞こえた。ミストが急いで振り向くと、何百という量のワイバーンがいた。紋章のついた岩の上に別のワイバーンが降り立ち、魔力を送った。回復の魔術が、岩山の中へはいりこんでいった。

「こいつら・・・まだ諦めてないのか!」

ミストはそう言い、ドラゴンヘッドを握りなおした。かつて掴み損ねた龍の世界の完成を夢見るワイバーンが、一斉に襲い掛かった。



 第9回終了です。 
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by jwpwm424 | 2007-05-13 17:34 | 『のんびりメイプル生活』

不在

 短い期間ですが、5/9朝7時~5/11の夜10時頃まで、行きたくもない修学旅行のため、一切ログインできません。そのため、もしその期間中にメイポに僕がログインしたのを見かけた場合、偽者と判断して本人確認をとっていただいても結構です。

 えー帰ってきたので追記です。とはいえすぐにテストが始まるので、狩りなどがちゃんとできるようになるのは5/18になりそうです;
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by jwpwm424 | 2007-05-08 20:40 | リアル関係・その他

第8回 珠蟲姫の里帰り

 今回は、銀鷹さんの提供してくれたネタが一部あります。また、僕の友達が出演します(本人には許可済み)。ではスタートです。



 手懐けた猪は、人間の2倍以上の速さで走れた。海の中を走り、オルビス塔までたどり着くと、1階の魔法石の前にはまたも魔法石の書が置いてあった。

「・・・誰が置いたんだ・・・?」

ミストはそういいつつ、猪の上から手を伸ばし魔法石の書を取って読んだ。オルビス塔の20階にたどり着き、そこから船へとさらに走った。

「・・・どうやらまた何か起きたようだな・・・悪いけど、後をつけてくれない?」

彼らが走り去った後に、柱の影から出て来た誠は彼らの仲間となったスターフィクシに言った。スターフィクシ達は頷いて、船の方へ飛んでいった。

 船に乗って、珠蟲姫をミストは猪から降ろし、自分も猪から降りた。すると猪は急に小さくなり、薬瓶と同じぐらいの大きさまで小さくなると、彼の道具袋へと飛び込んだ。

「乗ってない時は小さくなるんだな・・・便利なもんだ。」

ミストが一人で呟いた。珠蟲姫は、マストに座って顔を触手で撫でていた。

「・・・ったく・・・あのケンタって奴、香水に何いれてんだよ・・・」

ミストはそう言って、道具袋から彼女用として持ってきた動物の肉を取り出して、珠蟲姫の前に置いた。珠蟲姫は両手の触手で肉を地面に押さえて、肉にかじりついた。

「・・・姫さん・・・」

変わり果てた自分の恋人を見て思わずミストは目をそらした。

 早朝、再び猪に乗り、ミストはマヤの家に入った。

「そのモンスターは一体・・・?」

マヤはまず、彼の乗っている猪を見て言った。

「ああ、こいつは俺が手懐けたモンスターさ。すごい速さで走れるんだぜ。」

ミストはそう言って猪を自慢した後、珠蟲姫を担いで地面に降ろした。

「・・・珠蟲姫さん、何か様子がおかしいですね・・・」

降りてすぐ、地面に座った彼女を見てマヤが言った。ミストがやや嫌そうに、

「じつはな・・・こいつを手懐けた時に使った香水を姫さんがにおったら、猫みたいになっちゃったんだよ・・・マヤちゃん、なんとかできないか?」

マヤはしばらく何か考えて、

「私には難しそうです・・・その香水の効力が切れるまで、珠蟲姫さんはここで私が見ておきます。」

そう言った。ミストはわかったと言い、治療法を探してくると言って出て行った。

「・・・ふう、困ったわね・・・」

前の日とはまったく違う、珠蟲姫を見てマヤが言った。

 昼になって、マヤはとりあえず果実のクッキーを作り、珠蟲姫に渡した。珠蟲姫はそれを地面に落として、片手で固定して食べた。

「ああっ、そうじゃなくて・・・」

マヤは慌てて珠蟲姫を止めて、手で持って食べるんだと言った。しかし彼女は頷きもしなかった。

「・・・しょうがないわね・・・皿を取ってくるから、ちょっと待ってて。」

そう言って、マヤは2階へとのぼった。珠蟲姫は急に何かを思いついて、触手を前足代わりにして家を飛び出した。

 珠蟲姫はヘネシスのタクシーの前に行き、窓ガラスを叩いた。

「乗りたいんですか?」

中の運転手が聞くと、珠蟲姫は頷いて800メル分の札を口にくわえて運転手に渡した。するとドアが開いた。珠蟲姫はそれに乗り込んで、カニングシティへと向かった。

 カニングシティの建物を器用に登り、クレーンの上にいたペリーにメル袋をさしだした。

「ジパングまで行くのか?じゃあ、おらの口のなかにはいってくれ。」

前と変わらぬのんびりとした口調でペリーが言って、口をあけた。珠蟲姫はその中へ入った。

 ジパングについて、珠蟲姫は迷わずからすの家を通っていつも夜の松林へとついた。そこにはかつていたお化け提灯の姿はなかった。さらに進み、破壊された集落を抜けると、彼女にとって家である大仏の前についた。仲間は一人もいなかった。

「・・・」

珠蟲姫はまったく表情を変えず、大仏の前に座った。あたりには、着物の切れ端が落ちていた。さらに奥へ進むと、大仏の近くに誰かがしゃがんでいた。

「・・・?」

珠蟲姫はさらに近づいた。するとそこにしゃがみ、目をつぶっている男が何か言っているのが聞こえた。

「・・・珠蟲族の皆さんすいません・・・僕が・・・あんなことをしたばかりに・・・」

その男、レビアンズは目をつぶってそう言っていた。珠蟲姫は思わず近づいた。

「うわっ!・・・あなたは確か、珠蟲姫さんですよね?」

レビアンズが聞くと、珠蟲姫は頷いて彼の膝の上に寝転んだ。

「・・・前とは随分様子が違いますね・・・」

やや困ったような表情でレビアンズは言い、彼女の水色の髪をなでた。珠蟲姫は喜んでいるような表情をつくり、彼の頬をなめた。

「・・・そうだ。いいことを思いついた・・・」

レビアンズは何か企んでいるようにそう言って、バトルロードの後ろに下げている道具袋から瓶を取り出した。蓋のあるその瓶の中には、毒々しい緑色の粉が入っていた。

「あれ・・・水がないな・・・しょうがない、取ってくるか・・・」

レビアンズは優しく珠蟲姫を地面に降ろして、松林の方へと歩いていった。大仏の影から、誰かが彼を見ていた。

 松林の近くで水を汲み、集落を歩いていると、彼の前に人が現れた。

「むっ・・・誰ですか?」

チュロイバーを背中から抜いて、レビアンズが言った。

「・・・彼女に何をするつもりだ。」

背の高い、レビアンズの前に立つ男は静かにそう言った。

「あなたに教える必要はありません。そこをどいてください。」

レビアンズは怒ったような声で言い、チュロイバーに龍の力をこめて振り下ろした。前にいた男が真っ二つになった・・・ようにレビアンズには見えた。しかしそれをよく見ると、藁で作られた身代わり人形だった。

「しまった!」

レビアンズが慌てて後ろを向くと、その男が弓を構えていた。魔方陣の中から、金に光る4本の矢が撃ち出された。

「ぐわっ!」

眉間に4本の矢を受けたレビアンズは、ばたりとその場に倒れた。その男は静かに、彼の上を通って大仏の方へと向かった。

 体を丸めて、大仏の前に寝ていた珠蟲姫の所に、男がたどりついた。

「さあ・・・もう大丈夫だぞ。」

さっきとは違う、優しそうな表情で言って、彼女の前にしゃがんだ。

「君は・・・ここに何をしに来たんだい?」

男がそう聞くと、珠蟲姫が起き上がった。しかし、何も言わなかった。そのかわりに、大仏の後ろにあった、ピンク色の花びらを持つ小さな花を触手で指差した。

「それを、とってくれってことか。」

男はそう言って立ち上がり、花を摘んで彼女に渡した。珠蟲姫はそれをにおった。すると突然立ち上がって、

「ふう・・・やっと元に戻った・・・」

前と同じ、高い声で言った。

「あの香水のせいで、勝手に体が動いてたから、マヤさんにも失礼なことをしちゃった・・・」

そう言って、珠蟲姫は自分のした行動を振り返った。

「事情はよくわからないが、元に戻ってよかったね。」

男が、横から話しかけた。

「あなたは?」

珠蟲姫がそう聞いて、男がなのろうとすると、大仏の横の石塀が吹き飛んだ。そこから出てきたのは、強烈な風を起こす扇子を持った天狗だった。

「天狗・・・!倒されたはずなのに!」

珠蟲姫はそう言って、背中に手をまわした。しかし、何もなかった。

「あっ・・・ニスロックは砕かれたんだった・・・」

ホーンテイルを倒した後、モイラから聞いたことを思い出して言った。すると男が彼女の前に立った。

「ここは俺に任せてくれ。」

男はそう言い、自分に特殊なスキルを使った。男の両目が緑色に光った。その時、

「うらあっ!」

天狗が気合と共に巨大な風を起こした。その風がこちらへ来ると同時、弓に強い魔力をこめた。その風が弓の中央に吸い込まれ、荒れ狂う風の渦ができた。その渦から、魔力で作り出された、天使の羽のような巨大な弓が形成された。そして、風の渦の中から、金に光る矢が目にも止まらぬ速さで撃ち出された。

「これは・・・」

珠蟲姫が思わずそう言った。天狗に何千という数の矢が撃ちこまれ、しばらくして天狗は地面に倒れて、風と共に消え去った。幻の弓が消えた。

「すごいだろ?これが究極の弓使いだけが使える技だ。」

男が自慢するように言った。

「あの・・・あなたの名前は?」

珠蟲姫が思わず聞いた。

「俺は、銀鷹ってもんだ。君は?」

その男、銀鷹はそう名乗って、珠蟲姫は簡単に自己紹介した。

「なるほど・・・君はかつてここにいたんだけど、他の人と旅に・・・か。ところで君は弓を使うのかい?」

銀鷹の問いに、今は弓がないけど使っていたと言った。

「じゃあ、俺が色々教えよう。ひとまず神社まで戻ろう。」

銀鷹の言葉に珠蟲姫は頷き、大仏の前をゆっくりと去っていった。


 僕の友達の銀鷹さんが登場しました。次は何かの話です;

この話のネタ提供者:xx銀鷹xx さん
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by jwpwm424 | 2007-05-07 20:37 | 『のんびりメイプル生活』
 かなり前から計画していた、モンスターライディングのネタです。ではスタート



 ライオネルの墓参りを終えた珠蟲姫は、マヤから料理を習っていた。タキシードの上に薄いオレンジ色のエプロンをつけ、片手に物をまぜるための木の棒を持っていた。

「えっと、じゃあ、私の作ったのをかきまぜてね。」

マヤは彼女の横に立って、木のボウルに入ったクリーム状の物体を手渡した。珠蟲姫は頷いて、ゆっくりと、かきまぜはじめた。

 それから色々な手順をこなした後、

「これで完成ね。」

珠蟲姫が自信たっぷりに言った。そこにあったのは、マヤの得意料理であるケーキだった。

「後はミストさんが帰ってくるのを待つだけ・・・あ、そうだ!家の裏に、ジュースがあるから取ってくるわ。」

マヤはそう言って、家の裏庭へと走っていった。珠蟲姫は、もう1度自分の作った(ほとんどマヤが作ったのだが)ケーキを見た。ミストが自分の作ったケーキを食べるのを想像して、楽しくなった。

 ミストは、桜咲く道を抜け、ペリーに頼んでカニングシティまで戻っていた。そして、タクシーに乗ろうとした時、

「そこにいるのは、ミスト君じゃないか?」

後ろから声がしたので振り向くと、バーの入り口にダークロードがいた。

「ああ、ダークロードさん。久しぶりだね。」

ミストはレビアンズの最初の襲撃以来会っていない彼に挨拶した。

「その格好と武器を持ってないことから見ると、世界は平和になったんだな。」

ダークロードの鋭い読みに、ミストは頷いた。

「じゃあ、暇になったらバーに来てくれ。新しいワインがあるんでな。」

どこかしら楽しそうな彼の言葉にミストは頷いて、ヘネシス行きのタクシーに乗り込んだ。

 ヘネシスに戻り、マヤの家にミストは入った。

「お帰りミストさん。ケーキがあるんだけど、食べない?」

エプロンを外した珠蟲姫が言った。

「もしかして、姫さんが作ったのか?」

勘の鋭い彼は珠蟲姫を見て言った。

「まあ・・・そうなんだけどね。いいから食べてみて!」

頬を赤らめながら珠蟲姫が言った。ミストは木の椅子に座り、マヤが持ってきたジュースを受け取った。そして、木のスプーンでオレンジ色のケーキを一口食べた。

「うん、うまいな。姫さん、これからも作ってくれよ。」

笑顔でミストが言った。珠蟲姫は自分の作った料理が認められ、とても嬉しかった。

 ケーキを食べ終わったミストは、珠蟲姫の見てない所で、マヤに尖晶石の入った袋を手渡した。

「こんなに沢山・・・どうもありがとうございました。2~3日後には作っておきますね。」

マヤはそう言った後、

「ところで、アクアリウムという街を知ってますか?」

アクアリウム?とミストがたずねた。

「エルナスの近くの海の中にある街なんですけど、珠蟲姫さんと一緒に行ってみては?」

マヤの提案に、ミストは少し記憶を辿った。デニスと一緒に、海に入った時は街に行く間もなく、竜巻に吹き飛ばされてしまったことを思い出した。

「海の中の街か・・・よさそうだな。じゃあ、今日の夕方に出発するよ。」

ミストはそう言って、道具袋を開いた。中に自分と彼女の分の食料、パワーエリクサー5本が入っていることを確認して、閉めた。

 夕方。太陽が島の中央の巨大樹に隠れ始める頃、ミストは珠蟲姫と一緒にエリニアへ向かい、船に乗った。夕日でオレンジに染まった空が綺麗だった。

「そのアクアリウムって街はどんなところなの?」

珠蟲姫が聞いた。

「綺麗な海の中にあるらしくて、魚とかも沢山いる街らしい。俺も行ったことがないからよくわからないが・・・」

ミストはとりあえずそんなことを言い、マストの上から前を見た。後ろから光る夕日が流れる雲に当たり、オレンジ色の海を泳いでいるようだった。

 オルビスに到着し、誠の所によることなくオルビス塔に入った。

「ん・・・?」

入ってすぐ、ミストが足を止めた。本来いないはずの、スターフィクシが1匹いたからだ。そのスターフィクシは彼らを見つけると、緑の紐でくるまれた巻物を手渡した。

「これを使えってことか?ありがとよ。」

ミストは笑ってそう言い、魔法石を活性化させて1階へと飛んだ。彼らが消えたことを確かめると、誠が柱の影から姿を現して、スターフィクシを撫でた。

 オルビス塔地下1階の一番下についたところで、

「もしかして、この中にもぐるの?」

珠蟲姫が聞いた。

「デニスの奴も同じようなこと言ってたな・・・大丈夫。俺に掴まっててくれ。」

ミストはそう言って、片手を彼女の方へ出した。珠蟲姫はゆっくりと、その手に触手を絡めた。

「じゃあ、行くぜ!」

ミストは、彼女の触手をしっかり掴んで、壁の穴へ入った。

 海の道へ二人は出ると、珠蟲姫がゆっくりと触手を離した。

「わあ・・・デニスさんの体から見てたけど、海って綺麗ね!」

そう言って感動をあらわした。ミストはやや満足げな表情で頷いた後

「じゃあ、この先まで行こう。・・・ところで姫さん、泳げるのか?」

そう聞いた。

「多分大丈夫だと思うけど・・・」

珠蟲姫は不安げに言った。すると、ミストが絹の手袋で彼女の片手を掴んだ。

「俺が泳ぐから、体重をかけずに景色を楽しんでてくれ。じゃあ、行くぞ!」

張り切った様子でミストは言って、砂を蹴った。ドレスを着ているにも関わらず、ミストはすごい速さで泳いでいった。

 時間にして2分ほどし、アクアリウムにたどり着いた。

「よーし、ついたぞ。」

まったく息の乱れていないミストは、砂に足をつけた。珠蟲姫がゆっくり手をはなした。

「ミストさんって、泳ぐの速いのね・・・」

珠蟲姫が関心したように言った。

「へへっ、まあな。じゃあ、中へ入ろうぜ。」

頬を赤らめて照れた後、ミストは貝で作られた入り口へ入った。

 センターホールを抜け、上下に広い部屋に2人は入った。

「ここは・・・なんだ?」

ミストが言うと、

「あ!旅人さんですね!動物園にようこそ!」

彼の前から声がしたのでそっちへ向くと、水色の帽子を被った、見たところこの部屋の管理人のような人がいた。

「僕はこの動物園の管理人、ケンタです。たった今終わった新しい技術があるんですが、使ってみません?」

ケンタはそう自己紹介した。

「新しい技術?」

ミストが聞いた。

「モンスターを手懐けて、その力をかりることができるんです。やってみます?」

ケンタの問いにミストは頷いた。するとケンタは、薄いピンク色の香水の入った瓶を出した。

「この香水を、僕が捕まえておいたモンスターに匂わせてください。そして、近くに寄ってきたらすぐにこの鞍をつけて上に乗ってくださいね。」

そう言って、ケンタは皮で作られた鞍をミストに渡した。

「それと、その香水にはすごい力が潜んでますから、くれぐれも割ったりしないでくださいね。」

ケンタの注意にミストは頷いて、珠蟲姫と一緒に動物園の上へとのぼっていった。

 途中の足場に、とてもモンスターとは思えない、薄い肌色の毛をした猪がいた。

「こいつ・・・だな。」

ミストはそう言って、猪に近づいた。

「その香水をかけるの、私にやらせて。」

後ろから珠蟲姫が言ったので、ミストは香水を彼女に渡した。珠蟲姫はゆっくりと猪の前に近づき、頭を撫でた。そして、香水瓶の蓋を開けた。甘い香りがあたりにたちこめ、ミストがすかさず後ろからかけよって猪に鞍をつけた。そして飛び乗った。

「こりゃいいな。姫さんも、早く乗れよ。」

猪の上からミストが言った。しかし珠蟲姫は、座って、片手に蓋の開いた香水瓶を持ったまま動かない。あたりに濃い甘い匂いがたちこめはじめたので、

「姫さん、その香水瓶、蓋をしめてくれよ。」

猪から降りて、ミストが珠蟲姫に近づいた。その時、珠蟲姫の片方の触手から香水瓶が離れて落ちた。

「姫・・・さん?」

不審に思ったミストが話しかけると、急に珠蟲姫がミストに飛び掛った。

「うわっ!」

思わずミストは珠蟲姫を離して後ろへ下がった。すると、珠蟲姫は片手の触手で顔を撫でていた。その動作は、猫のようだった。

「・・・さっきの妙な香水のせいか・・・?」

地面に落ちた、ピンク色の液体をうらめしそうにながめながら、ミストは珠蟲姫をかついだ。そして猪の上に乗り、

「はあっ!」

ドラゴンヘッドで猪の尻を叩いた。猪は驚いて、アクアリウムの外へと走り出した。



第7回終了です。最後の方の内容が微妙ですが、勘弁してください; 
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by jwpwm424 | 2007-05-02 18:47 | 『のんびりメイプル生活』