受験のため仮引退中でしたが、合格したので復帰しました。小説をはじめとしメイプル記事も更新されます。


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第6回 銭湯

 今回はかなり短い、ショーワ街の銭湯の話です。ではスタート



 「遅かったじゃないか。尖晶石は沢山用意しておいたぞ。」

ピポパが、ミストに尖晶石を手渡した。ミストは礼を言った後、レビアンズの近くに戻った。

「これであなたの用事も済んだみたいですね。ところで、聞くところによるとこの街に『銭湯』というものがあるらしいんですが、いってみませんか?」

レビアンズの問いかけにミストは頷いた。そして、街の真ん中にある、大きな建物に300メル払って入った。

 「ここが・・・銭湯?」

脱衣所に入って、まずレビアンズが言った。横に案内役と見える女性がいたので、

「どうやって利用すればいいんですか?」

レビアンズが聞いた。

「あぁあなた旅人さんね?ショーワ街へようこそ。ここはショーワ街にしかない銭湯ってところよ。まず、服を脱いで、これを腰に巻いて中に入ってね。」

そう言って、案内役の女性は青い紐で巻かれた折り畳んだタオルを2人に1つづづ渡した。

「どんなところなんだ・・・?」

ミストはとりあえず入り口のカーテンをしめながら、絹の手袋を外した。

「僕は・・・これを脱ぐのはやめときますよ。」

複雑な顔でレビアンズが言った。

「どうしてだ?」

ミストが聞くと、

「じゃあ見せてあげましょう。」

そう言ってレビアンズは右腰についている留め具を少し押した。カチン、と音がして、ロックが外れてバトルロードが金属音を立てて地面に落ちた。

「!!」

ミストは絶句した。レビアンズの首の付け根あたりに皮膚はなく、白く磨かれた骨が1本、背骨に繋がっていた。背骨からは肋骨が出て、その中央の、心臓のあるはずの場所には赤く輝くクリスタルがあった。脈打つように、光が点滅を繰り返していた。手と足は、クリスタルから出る赤い電撃のようなもので吊られていた。

「『生きてない』って意味、よくわかりましたね?」

笑いながらレビアンズが言った。

「そんなことができるんだな・・・」

まだ自分には使えない、高度な魔法技術にミストは驚いた。しばらくして、ミストは腰にタオルを巻いて、レビアンズはバトルロードをつけたまま中に入った。

 中は、暖かい煙が立ち込めていた。地面はタイルで、10人以上は入れそうな浴槽があった。

「これが銭湯か・・・」

心地よい、暖かい煙を感じながらミストが言った。そして、滑りやすいタイルの上を歩いて、浴槽の中を見た。

「水・・・か?」

そう言って、水を触った。やや熱かった。

「そこに、入るんじゃないですか?」

後ろからレビアンズが言った。ミストはゆっくりと、中に入って肩まで水につかった。まだ感じたことのない、心地よさだった。

「これは気持ちいい!レビアンズ、お前も入ってみろよ。」

ミストが、やや赤くなった顔をしながら手招きした。レビアンズも、ゆっくり入った。

「確かにいいですね。この銭湯というのは、体を清めることもできますね。」

手と足だけでその感覚を感じながらレビアンズが言った。水の中でも、幻想的にバトルロードの首保護の金属の切れ目から赤い光が出ていた。

「ふう・・・」

ミストが、すっかり慣れた様子で息をついた。

 しばらく入って、

「ミストさんは、4次転職しないんですか?」

レビアンズが聞いた。

「4次転職ってなんだ?」

ミストが聞き返した。

「あなた達がホーンテイルを倒してくれたおかげで、封印が解けてリプレのとある場所に入れるようになったんです。そこにいる賢者さん達に力を示せば、更に強い力が得られます。」

レビアンズはそう言って、片手を前に出した。真ん中に紫の目のある黒い炎、ダークスピリットが現れた。

「これは僕が4次転職で得た力です。かつて罪人だったダークスピリットの力を借りれるんです。」

とても罪人だったとは思えない、時々横を向いたりするダークスピリットを見て彼が言った。

「なるほどな。俺も、リプレに用があるときにするとしよう。」

ミストはそう言って、立ち上がった。そして脱衣所へと歩いていった。

「僕もそろそろ出るかな。」

レビアンズは金属音を立てながら立ち上がった。そして、浴槽の底に何かが沈んでいるのを見つけた。

 濡れた体を近くにあったタオルで拭いて、着替えているところにレビアンズも出てきた。そして、呼びかけた。

「ミストさん」

「ん?」

レビアンズは、さっき拾った、金の鎖に小さな楕円型の金属のついたペンダントを片手で持って見せた。

「これ、あなたのじゃないですか?」

そう聞くと、ミストは慌ててそれを取った。

「あ・・・ありがとよ。これは俺の一番大切にしてる物なんだ。」

そう言って、首にかけた。その上から、ウェディングドレスを着た。

「そんなに大事なものなんですか。一体その楕円型の金属の中に何が入ってるんですか?」

好奇心からレビアンズが聞いたが、

「それはお前には教えられない。姫さんにも、誠にも教えてないしな。」

ややぶっきらぼうにミストが答えた。

 銭湯の外で、

「じゃあ、俺はヘネシスに戻るよ。」

ミストが濡れた頭にタオルを巻きながら言った。

「僕は、オルビスのほうへいってきます。色々と用事があるので・・・」

鎧をタオルで拭きながら、レビアンズが言った。

「そうか。またどこかで会おうぜ。」

ちょっと悲しそうにミストはそう言って、夕日の方へと、歩いていった。レビアンズはそれを静かに見ながら、さっき買ったコーヒー牛乳を飲んだ。

「・・・この街はやっぱりいいですね・・・今はもう会えないあなたと、いつか来たいです。」

悲しそうな感じで、空を見上げてレビアンズが言った。空は、綺麗なオレンジ色に染まっていた。



 第6回終了です。次こそモンスターライディングの話です。ちなみにミストのペンダントについては、とても深い意味がある・・・と思います。
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by jwpwm424 | 2007-04-24 18:35 | 『のんびりメイプル生活』

第5回 ムービースター

 今回は、黒閻の魔術師さん(瞬殺さん)からもらったネタです。なお、メイポ内やブログ内でネタを提供してくれて、そのネタが採用された場合は最後に名前を載せます。一部僕のオリジナルもあります。ではスタート。



 珠蟲姫から似合っていると言われ、ひとまずそれを信じたミストは、マヤの家へ彼女と共に行った。

「えっ・・・ミスト・・・さんですか?」

彼の姿を見たマヤが驚いて言った。やっぱり似合ってないのではないかと疑いながらも、ミストは頷いた。

「マヤさん、私はどう?」

白い縞模様の入ったタキシードを見せながら珠蟲姫が言った。彼女の水色の髪とは、まったく合っていなかったが、とりあえず、

「いいと思う。」

と言っておいた。昼になり、マヤ手作りの昼食を3人で食べた後、

「ミストさん」

自分の体が映るほど大きな鏡の前で、不機嫌そうな顔をしていたミストにマヤが話しかけた。

「じつは、一つ頼みがあるんです。」

頼み?とミストが聞いた。

「ショーワ街って知ってますか?その街の裏で取れる、尖晶石がほしいんです。」

懐かしい街の名前を思い出しつつ、

「なんでそんなものが必要なんだ?」

ミストが聞いた。すると少し声の音量を下げて、

「珠蟲姫さんの矢入れを見て、ほとんど矢が残ってなかったので、その石を使って私が矢を作り、プレゼントしたいのです。」

庭でライオネルの墓に花をそえている彼女を見ながら言った。ミストは、今はいない仲間、デニスが緊急用と言って持っていた赤い矢を思い出した。その矢の矢じりは、確かに尖晶という鉱石で出来ていた。

「それくらいならお安いご用さ。俺も平和になったあの街へ行きたいから、ついでに取ってくるよ。」

快く、ミストは引き受けた。そして、新しく自分で作った道具袋に、購入した獣の肉などをいれ、出発した。

 ジパングの桜咲く道を抜け、悪党のいなくなった裏通りを歩いてショーワ街へ着いた。一番近くにいた、水色の服を着た男に話しかけた。

「尖晶石を少しもらえませんか?」

「ん・・・?君は、この街の住人ではないね。私はこの街の警察官、ピポパだ。君は?」

ピポパにそう聞かれ、自分はかつてこの街の悪党を退治したミストだと言った。

「おお・・・君が噂のミスト君か。コンペイから聞いた話とは随分違うように見えるが・・・」

街の雰囲気と限りなく合っていない、ウェディングドレスを見ながら言った。

「君の頼みとあれば、引き受けよう。2時間後、また来てくれ。沢山用意しておこう。」

ピポパに礼を言いながら、ミストは前行かなかった、ショーワ町通りへと歩いた。

 ショーワ街通り入り口の近くにある、映画館の前に人が集まっていた。

「なんだ・・・?」

特にやることもないので、その人だかりの中をのぞいた。そこには、黒い服を着て、シルクハットを被った女性が立って何か話していた。耳をすましてみると、

「・・・とにかく、どなたか悪党の役をやってくれる方はいませんか?」

という部分だけ聞き取れた。その言葉に人だかりからは、あれだけ苦しめられたから嫌だよなー、という声や、役が役だからね、といった言葉が聞こえた。

「ちょっとすいません、一体何の話をしてるんですか?」

ひとごみをかきわけ、その女性、スカイの前へ立ってミストが聞いた。

「あなた・・・旅人さんね?ちょうどよかった!ちょっと頼みたいことがあるの。」

そう言ってスカイは、事情を説明し始めた。

 ショーワ街の人々の楽しみは、映画を見ることだった。毎月スカイと、ふらのという男が新作を考え、2~3人いるスタッフ達と一緒に撮影していたのだが、ついに映画の題材が思いつかなくなってしまった。そんな中、脚本を書く担当のふらのが今は誰もいない、かつて悪党のアジトだった火狸金融の前を通って思いついた。『あの悪夢のような出来事を映画にしてみてはどうか』と。

 そのことに、スカイは反対した。ショーワ街の人々に、悪夢を再び思い出させる気かと。しかしふらのは、『その悪夢の最後に、前旅人の人がやったように、悪党が倒されるシーンを入れよう。そうすれば、見ている人は、自分達は悪夢から解放されたんだと、再認識できるだろ?』と言った。これにはスカイも賛成だった。現に、あの事件からしばらく経った今も、警察には『本当に悪党達は一人もいなくなったのか』という内容の電話がかかってくるという。

 早速、ふらのは脚本を書いた。しかし、問題があった。監督をする自分と、撮影を担当するスタッフを除くと、映画に出ることのできる人間は3人だけということになる。なので、住民に映画に出てほしいと呼びかけたが、返事はつれないものだった。

「っというわけで、あなたにも悪党の役として映画に出てほしいの。報酬は弾むわよ。」

ミストはまあ暇だから別にいいだろうと思い、承諾した。しかし、他の住人は誰も、映画に出るとは言わなかった。そんな中、人ごみから少し離れて騒ぎを見ていたふらのの所に、杖をついた老人がやってきた。

「ふらのさんや、どうしたのかね?」

ふらのは、じつは・・・という言い出しで、事情を説明した。

「ほう・・・それなら、わしにいい考えがある。ちょっと強引な策だが、危険はないじゃろう。」

その老人、ヨコヨコはそう言い、人ごみの方へと歩き出した。

 あの手この手で説得をしているスカイの横に、ヨコヨコが立った。

「ちょっとまちなさい。」

落ち着いた口調でヨコヨコが言うと、ざわざわとしていた人々が一斉にだまった。

「みんな、ちょっとわしに注目してくれんかの?話したいことがあるんでな・・・お、そうそう、スカイの横にいる君もじゃ。すまんがわしの前に立って、わしを注目してくれ。」

ミストは、よくわからないがとりあえず言うとおりにした。ヨコヨコは全員が自分を見ていることを確認すると、目を閉じた。そして、目を大きく開けた。ゆっくりと、ヨコヨコの黒い瞳が小さくなっていった。それに、スカイ以外のすべての人が引き込まれるような錯覚を覚えた。そして、限界まで瞳が小さくなったところで、目を閉じた。ヨコヨコを見ていたすべての人の頭が、下に向いた。そして、全員の頭が、同時に上がった。

「それじゃあみんな、頼むぞ。」

ヨコヨコがゆっくりと言うと、すべての人が同時に頷いた。そして、火狸金融の方へ歩き出した。

「さあ、スカイよ。ふらのと一緒にがんばってくれ。わしも楽しみにしておるぞ。」

微笑みをうかべながら、ヨコヨコが言った。

 催眠術をかけられた人々は、ふらのの指示どうりに、彼の用意していた衣装や武器庫に放置されていた武器を持った。そんな中、

「ここに来るのも、久しぶりだなぁ・・・」

ショーワ街の銭湯の前で、4次転職を終え、チュロイバーも取り戻したレビアンズが言った。彼の体には、決して侵食されることのない、制御できる闇の力がみなぎっていた。

「ちょっと、そこの旅人さん!」

スカイが、レビアンズに声をかけた。

「今、映画を作ってるんだけど、ヒーローの役をやってくれない?」

レビアンズは快諾した。そして、その内容を聞いた。

「ふむ・・・あの悪夢を・・・ですか。じゃあ、遠慮なく悪党役の人たちを倒してもいいんですね?」

レビアンズはどこか楽しそうな様子で言った。スカイは、静かに頷いた。

 ミストは、銀色のスーツを着て、小型のミサイルを撃ちだす重火器、ロケットランチャーを持っていた。そして、監督であるふらのの指示を応接間で聞いていた。

「じゃあ、次は悪党達から姐御って慕われている人とボディーガードの会話のシーンだ。会話の内容は、街の人々に襲撃を仕掛ける時の作戦会議!感情をこめて、しっかり演技してくれよ!あ、そうそう。ミスト・・・さんだっけ?君のセリフは、壁に紙をはりつけておくから、それを読んでくれ。じゃあ、位置について。」

ふらのがちょっとまえとはうってかわった明るい表情で言って、ミストと姐御役の女性はソファに向かい合って座った。所々についていた弾痕は、スタッフがすべて修復していた。

「はじめるよー!」

ふらのが椅子から立ち上がって、カメラの横に立った。

「3,2,1・・・アクション!」

指でカウントし、最後に大きな声で言った。

「姐さん、いつ街のやつらを襲うんだ?」

ミストが、かつて彼を襲ったボディーガードのように姐御に話しかけた。

「そうだねぇ・・・明日の朝、奴らがのんきに朝食を食べてる所を襲うとしよう。」

そう姐御役の女性は言って、かつていた本物のように笑った。ミストは、

「平和を突然ブチ壊す・・・姐さん、あんたはやっぱりすごいぜ。」

立ち上がって言った。そこで、

「はいカーット!いい演技だよ!ミストさんも決まってた!

ふらのが大きな声で叫んだ。

 アジト内での悪党達の話のシーンの撮影も終わり、後はレビアンズが突撃するだけとなったので、

「じゃあレビアンズさん、思いっきり頼むわ!話すことはヒーローっぽいことでいいから、遠慮なくやっちゃって!」

スカイの最後の説明を聞いて、レビアンズは鉄の門を開けた。そして、あの悪夢とほとんど同じ状況の、悪党のアジトへと入っていった。

 駐車場では、手下や幹部の役をしている人々が一斉にレビアンズに襲い掛かった。

「はあっ!」

レビアンズは軽くジャンプして、龍の力を込めた鉾を振り下ろした。向かってきたすべての人が吹き飛んだ。そして、車の整備などをしていた手下をなぎ倒しながら、エレベーターに乗った。

 2階も、同じように進んだ。そして、かつてデニスとミストが死闘を繰り広げた応接間に入った。沢山の幹部の中央に、姐御がいた。

「あんたかい。ヒーロー気取りの旅人ってのは。あたいの手下達を痛めつけて、生きて変えれると思わないでよ!」

そう姐御役の女性は言って、懐からマグナムを取り出した。そして、撃った。避けきれなかったレビアンズに銃弾が当たった。

「痛っ!」

2mぐらい吹き飛ばされたレビアンズは、撃たれた胸を押さえながら言った。その時、体の中から力が溢れた。それは、命の危険にさらされたとき、心の枷が外れて攻撃力が爆発的に上昇するスキル、バーサークの力だった。

「よくも街の人たちを!」

映画の設定に合うように叫びながら、スラッシャーを放った。龍の力が幹部と姐御に当たり、姐御が怯んだ。その隙にレビアンズは地面を蹴って、姐御の腹を横向きに切り裂いた。

「ぎゃあっ!」

至近距離からの一撃を受けて、姐御は倒れた。すぐにレビアンズは、パワーエリクサーを飲みながら武器庫へと走った。

 武器庫には、親分役の男と、手下や幹部役の人々が沢山いた。

「ダークスピリット、頼んだよ!」

箱の上に立ってレビアンズはそう言って、片手を顔の前に出した。手の先に、小さな黒い炎が灯った。その炎の中央には、紫の目が一つあった。そしてそれは彼の横に浮遊した。

「くらえぃ!」

親分がそう叫びながらマシンガンを撃った。高くジャンプしてレビアンズはそれをやりすごし、そのままスラッシャーで空中から切り裂いた。全員が倒れた。さらに進んで、最上階へとあがった。

 かつてあった宝石の類は、ふらのがすべて再現していた。そして、そこにミストがいた。背中にロケットランチャーを担いでいた。

「よくきたな。ヒーロー気取りの旅人さんよ。」

挑発するような口調でミストが言った。

「余計なことに、首を突っ込んだらどうなるかを、俺が教えてやるぜ!」

そう言って、ロケットランチャーをミストが構えた。くぐもった爆発音と同時にミサイルが撃ち出され、レビアンズの前の地面に当たった。

「うわっ!」

爆風で宙を舞うレビアンズに、次の弾が命中した。

「ひゃははは!これで終わりだ!」

何も言わずに地面に倒れた彼に、ミストがとどめの一撃を発射した。そのミサイルが届く直前に、レビアンズは地面を転がった。そしてその姿勢から、横向きに回転するチュロイバーを投げつけた。

「何ぃ!?」

煙の中からチュロイバーが飛んで来たことを認識してミストが叫んだが、既に遅かった。チュロイバーが深く、彼の胸に突き刺さった。ばたりと、ミストは倒れた。

「危なかった・・・」

レビアンズは起き上がって、ダークスピリットの癒しの力を借りた。回復しながら、チュロイバーを拾った。そして、部屋の奥にいた、大親分役のコンペイの前に行って、

「もう、あなた達の悪行は終わりです。」

スカイから言うように指示されたセリフを言って、彼女から受け取った、刀身がプラスチックで出来た刀を鞘から抜き、

「成敗!」

もう一つ指示されたセリフを言って、コンペイを刺した。

「う・・・ぐあっ・・・」

演技のうまいコンペイは、いかにもやられたかのようにそう叫んで倒れた。そして、レビアンズは腰にさしていた鞘を片手で持って、もう片方の手で刀を鞘に入れた。

「カーット!いいよいいよ!すごいよかった!最後も決まってたよー!」

撮影用のカメラに映らない所から見ていたふらのが興奮気味に言った。それと同時にコンペイも起き上がった。

「いやぁ・・・それほどでも。」

レビアンズは内心とても決まっていたと思っているので、それが当たっていて嬉しかった。そして刀を返した。

「無事に終わったようじゃの。じゃあ、そろそろ術を解くとするか。」

ふらのの後ろにいたヨコヨコはそう言って、指でコインをはじいた。いい音がして、地面に落ちた。それと同時、ミストが起き上がった。

「あれ・・・?なんで俺はここにいるんだ・・・?」

そう言った彼に、ふらのが事情を説明した。ミストはややがっかりしたような表情だったが、その後いい演技だったと褒められて照れていた。

 「では、気をつけてな。」

アジトの前で、ミストとレビアンズにヨコヨコが言った。ミストは、ウェディングドレスに着替えていた。

「撮影に協力してくれてありがとね。映画の最後には、君達の名前を載せよう。」

その横にいたふらのが言った。礼を言って、二人はアジトを去った。

 「さっきは撮影中だから言わなかったけど、どうやって生き返ったんだ?」

ショーワ街の、銭湯の前でミストが聞いた。

「いやあ・・・実は、僕は厳密に言うと生きてないんですよ。クリスタルの力で動いてるんです。」

レビアンズが言った。

「そんなことができるのか。・・・ともかく、リプレの人たちには謝ったのか?」

ミストの厳しい問いに、レビアンズはもちろんですよと言った。

「そうか。ならいい。」

短くミストが言った。

「ミストさんは、僕のこと怒ってないんですか?あれだけ邪魔したりしたのに・・・」

心配そうにレビアンズが聞いた。

「俺はな、長い間人を恨んだりはしないんだよ。お前はあれから闇のクリスタルに操られて、正気を失ってたんだしな。」

寛大な考えを言ったミストにレビアンズは礼を言った。

「これからは、友達としてやっていこうぜ。」

ミストは、絹で織られた手袋をつけた片手を出した。夕日を背にして、二人は握手した。



 第5回終了です。次はモンスターライディングの話・・・かもしれません。

この小説のネタの一部を提供してくれた方:黒閻の魔術師 さん
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by jwpwm424 | 2007-04-22 16:12 | 『のんびりメイプル生活』

第4回 オルビスの異変

 今回は誠の生活についてのはなしです。ではスタート



 誠は心地よい風の流れる、雲の公園の小さな建物の中で座っていた。すると、赤い帽子を被った、スターフィクシ達が彼の近くに寄ってきた。

「よくみると、かわいいもんだな・・・」

そのスターフィクシ達を見て、誠はそう呟いた。そして、彼の膝の上に、スターフィクシが降りた。とてもモンスターとは思えない行動に、誠は思わず、スターフィクシの頭を撫でた。帽子越しでも、ふわりとした感触が手に伝わった。そのスターフィクシは喜んで、杖を片手に持った。そして、杖を小さく振った。彼の横に、小さくても綺麗な光を放つ星の欠片が現れた。

「綺麗だな・・・これを僕に?」

その輝きを見ながら誠が聞いた。膝の上のスターフィクシは頷いた。彼はそっと星の欠片を取った。すると膝の上のスターフィクシが、両手を帽子にあてた。

「・・・頭の上に置けってこと?」

なんとなくそう言っている気がしたので聞くと、嬉しそうにスターフィクシは頷いた。言われたとおり、星の欠片を黒髪の上に置いた。膝の上のスターフィクシは再び杖を取り出し、誠の方を向いて杖を振った。星の欠片に強い魔力が流れた。しばらくして、誠は頭に手をやった。何かを掴んだので、それを目線まで降ろした。赤色の、スターフィクシが被っているものと同じ帽子だった。前には一つ、黄色い星の紋章が書かれていた。

「すごいね・・・ありがとう。」

誠はそう言った後、帽子を被った。サイズはぴったりで、被り心地はよかった。すると突然、

「あなたには、私の言っていることがわかったのですか?」

どこかから、そう聞こえた。誠はとりあえず、

「君がどこから話しているかはわからないけど、話していることはわかるよ。」

空へ向かって言った。すると、前のスターフィクシが彼の肩を軽く叩いた。

「私です。さっき、あなたに話しかけたのは私ですよ。」

そのスターフィクシの口は動いていなかったが、何か聞こえているような気がした。

「あなたは、人間なのに私達の言葉がわかるようですね。それなら、私達を助けてくれませんか?」

誠は戸惑いつつも、いいよと答えた。するとスターフィクシは、近くの瓦礫まで飛んでいった。彼もそれに続いた。

 瓦礫の近くには、負傷したスターフィクシやルナーフィクシ、サンフィクシがいた。彼らが傷ついた時にも零れる月や太陽の欠片が、あたりに散らばっていた。

「実は、オルビス塔のさらに上で、女神ミネルバ様の石像が砕かれて、それと同時に私達の仲間の一部が、突然私達を襲ったのです。」

あまりよくわからないが、誠はとりあえず『彼女達の仲間が突然おかしくなった』という部分だけはわかった。

「じゃあ、僕にそのおかしくなった仲間を倒してほしいってこと?」

理解した事を元に聞いた。

「それもあるのですが、なぜミネルバ様の石像が砕かれたのかを調査してください。あなたに渡したその帽子は、意識を集中させれば私達と交信できます。」

彼を案内したスターフィクシはそう言った。誠はわかったと言って、塔へと走った。

 石で作られたオルビス塔の隣に、別の入り口があった。そしてそこにあった雲を乗り継ぎ、しばらく上へとあがっていくと、塔の中へ潜入できた。そして、目的の物を見つけた。

「これはひどいな・・・」

あちこちを砕かれた、女神ミネルバの石像を見て言った。そして、塔の中を調査した。

塔の中には、邪悪な力を受けたモンスターが大量にいた。時々帽子を使って交信しながら、ほとんどの石像の欠片を取り戻した。最後の1つを取り戻すため、塔の外に浮かぶ雲の庭園へ飛び出した。

 塔の外部の、雲の庭園の所々にいたのは、棘のついた茎を持つ、見たこともないような植物だった。風も吹いていないのに壺のような形をした花が揺れ、緑の種がいくつか地面に落ちていた。

「塔の外の、庭園に見たこともない植物がいるけど、こいつらは一体何?」

帽子を使って、スターフィクシ達にそう送った。

「その植物はおそらく、ネペンシスというモンスターです。最近、公園の所々から出てきて、私達に攻撃を仕掛けてきます。やっつけてください!」

すぐにそう返事が返ってきた。誠は金のナイフ、ドラゴンサクスを握りなおした。

「よし、行くか!」

自分に気合を入れるように言って、異形の植物へ襲い掛かった。すべてのネペンシスが、彼の方へ向いた。まるで操作されているように、一糸乱れぬ動きで花が少し後ろへ下がり、口に見える部分から土色の物体を吐き出した。

「うえっ!なにこれ!」

そのべっとりとした感触に思わず誠は足を止め、近くの瓦礫に転がり込んだ。手袋をした手で顔を拭くと、泥のようにも見える物体がついていた。

「よくもやったな!」

泥などが大嫌いな誠はそう叫んで、移動力を上げるスキル、ヘイストを使った。さっきの倍の速さで一番手前にいたネペンシスに近づき、風を纏って一撃をくらわせた。ネペンシスの根元のやや上が宙に吹き飛んだ。残ったネペンシスからの射撃を、さっき使用した、風を纏って一撃をくらわせるスキル、アサルターでかわしながら一つのネペンシスの花を吹き飛ばした。それを繰り返し、すべてのネペンシスが消えた頃、雲の向こうから何かが現れた。

 雲の向こうから出てきたのは、通常の5倍はあるような大きさのフィクシだった。頭に巨大な青色の帽子を被り、体色は雨雲のような灰色だった。フィクシにあったかわいさは微塵もなく、口の横あたりから体色と同じ色の髭が生えていた。

「こいつがおかしくなったフィクシか。」

誠がそう言うと、その巨大フィクシ、パパフィクシはまっすぐこちらへ突撃してきた。横っ飛びでそれをかわし、アサルターの一撃を食らわした。パパフィクシの姿が薄れ、雲の中に消え去った。帽子だけが地面に落ちた。大きい帽子の中には、最後の欠片があった。そして、

「なんだこれ・・・?」

誠がそう言って手に持ったのは、闇のクリスタルの欠片だった。

「なぜこんなところに闇のクリスタルが・・・?」

大きさから見て害はないと判断したので、シェイドパンツのポケットにそれをしまい、走り去ろうとして、

「・・・」

どうしてもパパフィクシの遺物である青い帽子が気になったので、スターフィクシからもらった帽子を脱いで、大きな帽子を両手で持って頭の上で離した。案の定、体全部が帽子で隠れたが、すぐに帽子が彼の頭に合うサイズに小さくなった。

「こんな機能があったとは・・・」

関心しながら、もう一つの帽子を取って、塔の中へ走った。

 ミネルバの石像が復元し、塔の中に聖なる力が溢れた。窓から外を見ると、黒い光がはるか彼方へと逃げていくのが見えた。

「この騒ぎは闇の力が原因か。」

ホーンテイルもろとも滅んだと思われた闇の力を見ながら誠が言った。そして、塔を降りていった。

 「そうなのですか・・・闇の力が、このオルビスにまで及ぶとは・・・」

事情を聞いたスターフィクシが言った。そして、

「ともかく、これでオルビスに平和が戻ります。どうもありがとうございました!」

そう言った彼女の後ろにいた、仲間も一緒に礼をした。誠は頷いて、立ち去ろうとすると、

「待ってください。」

スターフィクシが呼び止めた。振り向くと、30cmほどの小さな箱を彼女が差し出した。受け取って開けると、小さいが光を放つ、デニスをメイプル世界へと引き込んだ路地裏にあった金の棒の欠片が入っていた。

「その欠片は、術者の命令で魔術を自動的に発動し続ける物です。あなたがその欠片に念じれば、私達の込めた防御の魔法があなたを守ってくれます。」

誠はなるほどと言って、箱を道具袋へしまった。そして、オルビスへと走った。

 帰る途中、雲の公園にいるクリエルに会った。

「誠さん!どこに行ってたの?」

ちょっと怒った様子でクリエルが言った。

「スターフィクシ達に頼まれて、オルビス塔まで行ってました。」

正直にそう答えると、

「『頼まれて』?スターフィクシの言葉がわかったの?」

その問いに誠は頷いた。

「私達妖精と同じ力が、あなたにもあるのかもしれないわ。・・・それじゃあ、これを食べて!」

クリエルの作った弁当を受け取った誠は、彼女の横に座って蓋を開けた。オルビスでは取れそうにない、果実で作った小さなケーキなどが入っていた。弁当を食べ終わった後は、クリエルの歌を誠は聞いていたという。そして、クリエルの聞く者を安らぎにいざなう歌が、その日の夜まで、雲の公園に流れたという。



 第4回終了です。次は瞬殺さんからもらったネタ(を少し変えた物)の予定・・・です。
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by jwpwm424 | 2007-04-20 19:41 | 『のんびりメイプル生活』

第3回 珍しい衣服

 舞台をミスト達に戻して、第3回スタートです。ちなみに、タイトルがいい加減な気がするのは手抜きネーミングセンスが僕にないからなので、勘弁してください;



 日が沈み、空に星が見える頃になっても、ミストは家を建てていた。

「ふう・・・今日はこれくらいにしとくか・・・」

そう言って、後は屋根を少し作るだけとなった、小さな家に入った。そしてその中で、自分が持ち込んだ赤いマントを毛布代わりにかぶせて寝た。

 翌日、朝日がはるか向こうの世界樹の後ろから見える頃、マヤの家に泊まっていた珠蟲姫は目を覚ました。

「・・・もう朝か・・・」

切られてない方の触手で目をこすりながら、ベットから起きた。そして階段を降り、庭へ出た。庭の隅にある、ライオネルの墓にマヤが花をそえていた。

「あら、あなたも早いのね。」

まったく眠たさが感じられない声でマヤはそう言った。珠蟲姫はまあねと言いながら、何か手伝うことはないかと聞いた。

「じゃあ、広場に行って、井戸から水をくんできてくれないかしら?」

マヤの頼みに珠蟲姫は頷いて、扉の横においてあった桶を持って広場へと走った。

 まったく汚染されていない、清水を桶にくんだ珠蟲姫は、横にあった掲示板に、新しい文書が貼られていることに気づいた。

「『旅人のミストさんが、広場の裏に家を建てます。付近の皆さんはご協力ください。』か・・・」

それを読んだ彼女は、広場の裏にある、建設途中の家へと走った。

 とても一人で作ったとは思えないほどしっかりとした作りの家のドアを開けると、ミストが壁によりかかって、涎を口から少したらして眠っていた。

「ミストさんったら・・・」

思わず珠蟲姫は笑いながら、彼の近くに桶を置いて、

「ミーストさん、朝ですよー。」

彼の顔の前で言った。

「んむ・・・もう朝・・・?」

寝ぼけた声でミストはそう言って、片目を少し開けた。前に珠蟲姫がいることがわかると、

「うわっ!ひっ姫さん!」

両目を完全に開いて、とても驚いた。珠蟲姫はくすくすと笑いながら、彼女がさっき井戸からくんだ清水の入った桶を彼の前に置いた。

「あ・・・ありがとう。」

顔を赤らめてミストはそう言って、手で水をすくって飲んだ。ある程度飲むと、ミストは立ち上がって、続きを作ると言った。

「がんばってね。」

桶を片手で持って、珠蟲姫は言った。ミストは張り切った様子で頷いて、横に立てかけた梯子をのぼりはじめた。帰りに水をまたくんで、珠蟲姫はマヤの家へ戻った。

 朝食をマヤの家で食べた珠蟲姫は、昨日言われたイベントガイドのところへ向かった。あたりの人々とは服装の違う、白衣を着た女性が、広場の門の前にいたので、

「あなたがイベントガイドさん?」

珠蟲姫は確認のつもりで聞いた。女性がええそうですよと言うと、

「珍しい服があるって聞いたんですけど、どんな服なんですか?」

続けて聞いた。

「普段は男性の方が着る服なんですが、女性の方用に少し直した服です。着てみませんか?」

珠蟲姫は少し迷ったが、彼女の持ち前の好奇心から、着てみたいと言った。するとイベントガイドは、リボンのついた、両手で持てるぐらいの箱を彼女に渡した。

「あっ・・・それと、靴も貸してくれませんか?」

何かを隠しているような様子で、珠蟲姫が言った。

 一方その頃、屋根をすべて完成させ、後は家具を入れるだけという状態まで家を完成させたミストは、気分転換にマヤの家へと向かっていた。その途中、

「ちょっとまってください。」

広場の入り口の門あたりで、声をかけられた。振り向くと、イベントガイドの女性がいた。

「あなた・・・その服でずっとここまで来たんですか?」

その言葉を聞いて、自分の服を見たミストは驚いた。珠蟲姫を運んだり、家を建てたりすることで、ノーブルドランの作った簡単な服をずっと着ていた事を忘れていたからだ。

「珍しい服があるんですが、着てみません?」

イベントガイドのその言葉に、この服よりましなのならいいとミストは言った。

「じゃあ、ちょっと目をつぶっててください。」

何かを企んでいるような彼女の目に不審感を感じつつも、ミストは目をつぶった。イベントガイドの女性は、珠蟲姫に渡したものと似ている、魔力のこめられた箱を彼の前へ置いた。そして、リボンをほどいた。白い光が、彼を包み込んだ。

 「もういいです。目を開けてください。」

時間にして1分もたたないうちにイベントガイドがそう言ったので、ミストは目を開けた。そして、自分の体を見た。

「なんだこの服は・・・」

上質の絹の糸で織られた、結婚式などで使われるウェディングドレスを着ていた。本来は女性用なので、胸元あたりが少し開いていた。手を見ると、絹で作られた手袋をはめていた。

「どうですか?」

彼女がそう聞いた時、ミストの後ろから珠蟲姫が着た。彼が少し振り向くと、珠蟲姫はいつもの桃色の着物とは違う、黒い服を着ていた。

「おお、似合いますね・・・」

ミストの横まで着た彼女を見て、イベントガイドが言った。靴は、黒く塗られた靴をはいていた。

「あれ・・・?この人は?」

隣にいる、黄色い花が上についたベールを被ったミストのほうを見て珠蟲姫が言った。ミストが彼女の方へ向くと、

「ミスト・・・さん?」

恐る恐る珠蟲姫が言った。嫌そうにミストが頷くと、

「似合うじゃない!」

笑って珠蟲姫が言ったので、ミストはもう一度自分の服を見た。

「・・・そうなのか?」

実際はどうなのかわからないので、彼はそう呟いた。



 誠の出番がまったくないですが、第3回終了です。次は誠の様子についての話になりそうです。
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by jwpwm424 | 2007-04-10 17:16 | 『のんびりメイプル生活』

第2回 竜騎士の復活

 好評かはよくわかりませんが、第2回目です。今回はレッドボトルさんから希望があったので、予定を変更してレビがその後どうなったかを書きます。ではスタート



 レビアンズは、リプレ行きの船に一人で乗っていた。

「風が気持ちいいなぁ・・・」

誰に言うというわけでもなく彼はそう呟き、ギリシア文字のΩを連想させる形をした矛先を持つ槍、歯翼月刀を何度か振った。

「にしてもベリブさんには、ほんと感謝してるな・・・僕の体が元に戻ったのも、ベリブさんのおかげだしなぁ・・・」

彼は自分の、赤いバトルロードを着た体を見て呟いた。

 2週間前のこと。意識だけとなったレビアンズと、その意識が封印された指輪を持ったベリブは、エルナスのアルケスタをたずねた。

「おお、君か。久しぶりじゃのう。元気にしてたか?」

アルケスタは彼を見ると嬉しそうに言い、ベリブは頷いた。そして、星の飾りがついた指輪を見せた。

「この中に、体を破壊されて意識だけになった、俺の友が眠ってる。あんたの力で、体をよみがえらせてくれないか?」

できるだけ状況を簡潔に伝えると、アルケスタは指輪を彼から受け取った。一通り見て、

「・・・なるほど。状況はわかった。しかし、何もない所に肉体を作るのは非常に難しいのじゃ。何かに意識を宿らせることなら私にもできるが、肉体自体を作るのは無理だろう・・・」

やや悲しげに、アルケスタが言った。ベリブはその時、閃いた。昔、レビアンズやその他の仲間と一緒に、ペリオンの断崖絶壁の近くまで行ったことを思い出した。そこには、死してなお鎧をつけた骸骨兵士達がいた。そしてその兵士達は、まだ生きているかのように、つまりまだ人間の体があるかのように動いていた。

「じゃあ、何かをベースにして、それに人間の体をつけることはできないのか?」

ベリブが聞くと、

「まったく邪悪な気に侵されていない、傷の少ない人間の骨でもあれば、そこに魔法で作った肉体をつけることは可能じゃ。しかし、そんなものをどうやって手に入れる気かね?」

アルケスタは肯定しつつ疑問をなげかけた。ベリブは、それに心当たりがあると言い、市場を飛び出した。

 ベリブは、ペリオンの遺跡周辺にいる、鎧をつけた骸骨兵士達を倒して回っていた。

「くそっ!こいつもはずれか!」

意思を失って地面に崩れ落ちた、ひび割れた骨を見てベリブが言った。空が満天の星空になった頃、

「これだけあれば足りるだろう・・・」

積まれた100本ほどの骨を見て言った。それを背中に担いだ皮製のバックにつめこみ、立ち去ろうとすると、

「なんだあれは・・・?」

道端に積まれた岩の間に、何かがあるのを見つけた。

 次の日の早朝、ベリブはアルケスタに骨を渡した。

「よく集めてきたのう・・・じゃあ、蘇生の準備をするから、その間に何かクリスタルを集めてくれんかね?」

アルケスタの問いに、

「なぜクリスタルが必要なんだ?」

ベリブが問い返した。

「クリスタルには、永続的に魔力を出し続ける力がある。私がその力を増大させ、体を保てるほどのものにしよう。その友の、職業は何かね?」

説明の後の問いに、ベリブはドラゴンナイトだと言った。

「ならば、力のクリスタルを3つほど、持ってきてくれ。」

骨の入ったバックを担いで言った言葉にベリブは頷いて、倉庫業者の方へと走った。

 アルケスタの家の中には、手、足、肋骨が宙に浮き、その下の床に魔方陣が描かれていた。魔方陣の中央には、レビアンズの意識が封じられた指輪が置いてあった。

「おお、早いのう・・・じゃあ、それを渡してくれ。」

赤く光る力のクリスタルを、ベリブは杖を持ったアルケスタに渡した。その3つのクリスタルを、肋骨の、ちょうど人間なら心臓のある場所に浮かべた。

「じゃあ、始めるぞ。・・・と、その前に一つ。」

骨の前に立ったアルケスタがそう言って振り向いた。

「君は、骨の後ろの、小さな魔方陣に立ってくれ。」

彼がそう言って指差した先には、青い光を上へと噴き上げる小さな魔方陣があった。ベリブはそこへ歩いて、光の中心に立った。

「その友達がどんな顔だったかを、しっかりと思い浮かべてくれ。・・・よいか?いくぞ。」

ベリブが頷いて、目をつぶったのを確認すると、アルケスタは杖を振り上げた。骨の下の魔方陣から幾つもの光が溢れ、手の骨に、肌色をした肉が現れていった。足も、腿の少し前あたりまで、魔法で作られた肉が形成された。胸にある3つの力のクリスタルが赤く光り、手と足が少し動いた。

「と・・・そうじゃ。忘れておった。」

後は顔を形作り、意識を入れるだけとなった体の前で、アルケスタが言った。

「何か、鎧はないかね?胴体がないから、見た人が怖がりそうでな・・・」

そういわれたベリブは目を開けて、部屋の隅においてあった自分の灰色のバックから赤い鎧を取り出した。それは、滅びた遺跡の中に埋もれていたものだった。

「おお、そんなものがあったとは。それをこっちに渡してくれ。」

ベリブは重たいバトルロードを、アルケスタに渡した。骨の前に浮いたバトルロードの前が開き、小さな魔方陣の方から装着された。

「さて、もう一度、彼の顔をしっかりと思い浮かべてくれ。」

小さな魔方陣に戻ったベリブは頷いて、目をつぶった。アルケスタが大きく杖を振ると、指輪から虹色の、小さな光の球が出た。それは力のクリスタルの中へ入った。続いて、バトルロードの首を覆うための金属あたりから、ゆっくりと首が、続いて顔が形成されていった。

 完全に顔が形成されて、魔方陣からの光が薄れる時、

「もういいぞ。」

アルケスタがそう言ったので、ベリブは目を開けて、アルケスタの方へと走った。そして、前に浮かぶ体を見た。その顔は、まさしく生きていた頃のレビアンズのものだった。ベリブが呼びかける前に、ゆっくりと、灰色の目を開いた。

「・・・」

ちょっと驚いたような様子で、手を見た。指を動かしたりした後、

「・・・僕の体が、元に戻った・・・」

レビアンズが、昔と変わらない、声変わりをしていない高い声で言った。それと同時に、彼の足が地面についた。

「レビ・・・」

ベリブは一歩近づいて、彼の手を握った。レビアンズは、何も言わずに頷いた。

 復活したレビアンズは、自分の体の仕組みを聞き、驚きつつもアルケスタに礼を言った。そして、その日の夜、

「ベリブさん。」

ベリブの家の中で、レビアンズが突然声をかけた。

「僕・・・もう一度、旅に出ようと思うんです。自分の強さを、もっと極めたいんです。」

ベリブは驚いたが、

「・・・そうか。じゃあ、行ってこい。俺は、ヘネシスで昔からの友と会おうと思う。」

そう言うと思ったというような表情で言った。

 次の日の朝、まずは迷惑をかけたリプレの人々に謝りに行くと、ベリブがもっていた歯翼月刀をもらい、ある程度の食料を持って出発した。

 そして今、レビアンズはリプレステーションについて、タタモの家へと走った。

「こんにちは!」

入ってすぐ、中でのんびりしていたタタモに挨拶をした。

「君は・・・誰かね?」

問いに彼は自分はレビアンズという者だというと、タタモは非常に驚いた。

「あの・・・それで今日は、謝りにきたんです。」

レビアンズがそう言うと、

「ふむ・・・」

落ち着いてタタモは椅子に座って、レビアンズの旅の経緯と、復活についての話を聞いた。

 聞き終わった後、

「そうじゃったのか・・・」

顎に手をあてて、タタモが言った。説明し終わったレビアンズは、地面に座って、

「あの時はすいませんでした!」

頭を下げて謝った。するとタタモは笑って、

「もう気にしておらんよ。結局、私達の仲間は誰も死ななかったからのう。」

そう言った。レビアンズは立ち上がって、

「じゃあ早速なんですけど、僕の持ってたチュロイバーはありませんか?あれがないと戦えないので・・・」

申し訳なさそうに言った。タタモはちょっと待っておれと言い、近くにいたハプリングの子どもにチュロイバーを持ってくるように言った。タタモは彼の前に戻って、こう言った。

「ところでレビアンズさんよ、かなり腕が立つと見えるが、4次転職はしてないのかね?」

「4次転職?」

始めて聞く言葉だった。

「ホーンテイルが倒されたことによって、動物の谷の邪気が消えて、賢者様達のいる場所へ入れるようになったんじゃ。その賢者様に力を示せば、今よりもっと強い戦士になれるぞ。」

タタモの言葉に、レビアンズは目を輝かせた。



 第2回終了です。次はエイプリルフールイベントについての話です。
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by jwpwm424 | 2007-04-09 21:01 | 『のんびりメイプル生活』

第1回 平和の始まり

 大変勝手ですが、小説・続編で終わったと思われたメイポネタ小説をしつこくやろうと思います;しかしほとんどのボスモンスターは既に倒されているので、前の小説で余り触れなかったクエストやメイポでの生活などを中心としていきたいと思います。なお、この小説では僕のオリジナル要素がかなり多いです。それでは、小説『のんびりメイプル生活』スタートです。



 リプレの人々から盛大な見送りを受けた3人は、オルビス行きの船の上にいた。

「これからどうする?」

ドラゴンヘッドを磨いているミストに、誠が話しかけた。

「とりあえず、俺と姫さんはヘネシスへ行くが、お前はどうするんだ?」

磨くのをやめて振り向いたミストに、誠はちょっと考え込んで

「僕は、オルビスに寄るとするよ。ちょっと会いたい人がいるからね。」

そう言った。ミストはそうかと頷いて、また杖を磨き始めた。珠蟲姫は、巨大生物によりかかって眠っていた。

 「なあミスト。」

船から降りる途中、誠が突然声をかけた。

「ん?なんだ?」

眠っている珠蟲姫を担いだミストが聞いた。

「もうモンスターとみんなで戦うことはなさそうだから、どこかに住まないか?」

その提案にミストは賛成だった。

「じゃあ俺は、ヘネシスのあたりをあたってみるとする。お前はオルビスか?」

彼の問いに誠は頷いた。

 オルビスステーションのチケット売り場前で、

「じゃあ、いい家探してこいよ。」

ミストは誠にそう言った。誠は頷いて、オルビスの街の方へ、走っていった。

「・・・ありがとよ。今まで一緒に戦ってくれてな。」

彼には聞こえなかったが、ミストははっきりと、そう呟いた。

 ミストと珠蟲姫がビクトリアアイランド行きの船に乗っている途中、誠はオルビスの雑貨屋のドアを開けた。

「クリエルさん、お久しぶりです。」

彼がそう挨拶すると、中で棚の整理をしていたクリエルが振り向き、

「誠さん!」

彼のほうへ飛んできた。

「よかった・・・無事に帰ってきてくれて。」

目に涙を浮かべながらクリエルが言った。誠は一礼した後、リプレの異変の原因をつきとめ、元凶のホーンテイルを倒したことを伝えた。

「よかった。これでこの世界にも平和が戻るわね。ということは、あなたは世界を救ったヒーローね!」

クリエルが微笑みながら言うと、

「いやあ・・・ヒーローなんて・・・」

顔を赤らめながら、誠が言った。

「ところで誠君、何か急ぎの用事はある?」

話題を変えてクリエルが聞いた。

「特に・・・ないですけど。」

あえてここに来た真の理由を告げずに誠は言った。

「じゃあ、雲の公園で食事でもしない?私が弁当を作るから!」

とても嬉しそうな様子でクリエルが言った。誠はこれに快諾し、雲の公園へと走った。

 ヘネシスへと着いたミストは、まずマヤの家へ行った。

「マヤちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど。」

テーブルでレモンティーを飲んでいたマヤはちょっと驚いて、なんでしょうかと聞いた。

「姫さんが戦いで疲れきって寝ちゃったから、ここで寝かせといてくれないか?俺はちょっと用事があるから、その間だけ頼む。」

ミストの頼みにマヤは頷いて、2階にあったベットに彼女を寝かせた。そしてミストは、自分の住む家を探すため、彼女の家を出た。

 ミストは、ヘネシスの長老スタンを訪ねた。

「ふむ・・・この街に住みたい・・・とな。家の建設費用は私からは出せないが、それでもいいかね?」

スタンの問いにミストは頷いて、家の値段を聞いた。それはとても高い金額だったが、リプレの人々からもらったメルで十分に足りた。スタンはヘネシスの広場の裏に家を建てるといいと言い、村の伝言板に家建設についての知らせが書かれた羊皮紙を貼った。

 ミストが必死に家を建てている頃、珠蟲姫がゆっくりと目を覚ました。

「あら、お目覚め?」

彼女がまず見たのは、そう言ったマヤだった。

「あ・・・マヤさん。どうして私はここに?」

上半身だけを起こして、珠蟲姫が聞いた。マヤは寝ている間にミストがここへ運んでくれたと伝えた。

「私ったら・・・あのパーティーが終わった後すぐに寝ちゃったのね。」

賑やかなパーティーを思い出しながら、珠蟲姫は言った。マヤは下で一緒に昼食を食べようと言い、1階へ降りた。珠蟲姫も、それに続いた。

 昼食には、マヤの手作りである木の実で作ったケーキと、ハーブのお茶が出た。

「いいなぁ・・・私もこれくらい作れたらなぁ・・・」

何かを想像している、焦点の合っていない目で珠蟲姫が言った。

「じゃあ、私が料理を教えようか?」

マヤの言葉に珠蟲姫は頷いて、ケーキを木のスプーンで食べ始めた。

 半分ぐらいケーキを食べ終えた時、

「珠蟲姫さん」

マヤが突然声をかけた。

「その服、かなりボロボロになってるけど、着替えた方がいいんじゃない?」

彼女のその言葉に珠蟲姫はなぜか動揺しながら、

「ま・・・まだ大丈夫よ。」

そう言った。するとマヤは何か閃いて、

「広場の近くにいる、イベントガイドさんの所へ行ってみたらどう?珍しい服があるらしいわ。」

珠蟲姫へ提案した。彼女は頷いて、残りのケーキを食べ始めた。



 1回目終了です。なお今回から生活っぽく(?)するため、数え方を回に変えます。
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by jwpwm424 | 2007-04-08 17:33 | 『のんびりメイプル生活』

5章 脅威

 前の章に書いたように、用語解説をします。

用語解説1

・世界編

アルセリオ:グラッグの住んでいる、南半球にある大陸国家。気候は温暖で、西の岬で魚が取れるため、食事は魚が多い。服は地球の洋服と似ていて、20年前にバズトラスの侵攻を受けた国。50年前に電気が開発され(第1次産業革命)同時に自動車や戦闘用の小型船も開発された。太古から200海里ほど先にある島々に住む『ブリスター』と呼ばれる民族から略奪を受けており、そのたびに港町では多数の負傷者が出ていた。第2時産業革命で重火器、機械兵器や浮遊車両が開発され、急激に近代化した。近年は巨大ドリルをメディストリートの東に建設している。首都はメノウで、国全体の人口は3億人。ちなみに13歳以上の国民に銃器の所持・使用が認められており、これはいつ襲ってくるかわからないブリスターに応戦するためという。しかし、国内の治安はとてもいい。

メリクリウス:アルセリオの隣にある、大陸国家。気候はアルセリオと比べるとやや寒く、農作物が主な食料。産業革命が50年前と20年前にあり、通貨統一、共通言語の作成など、アルセリオと交流がある。服装は冬の2週間だけある氷点下20度まで下がる期間の寒さをしのぐため厚めの皮で作られた物が多く、髪が黒いのが特徴。アルセリオと統合政府を作り、(本部はメリクリウスの首都アズライド)国の北に巨大ドリルを作っている。人口は2億5000万人。

バズトラス:北半球の、北極の周辺にある巨大な大陸国家。近くにまったく島がなく、遠くから見るとビルらしきものが建っているように見えるという。20年前、近代的な武器を用いてアルセリオとメリクリウスを壊滅寸前まで追い込んだ。

ブリスター:アルセリオにたびたび略奪に来る民族。機械類や近代的な武器がないが、身体能力が非常に高い(夜でも1000m先まで物が見える 等)ため、船で夜に上陸し、港町を襲って食料などを奪ってきた。人口は不明。

北極:星の最も北にある大陸で、氷の大地。地下に何かがあるとか、生物がすんでいるなどの説があるが、常に氷点下100度前後の気温のため、探索はされていないようだ。

・人物編

グラッグ:本名グラッグ・ノートダム。メディスストリートに住む15歳の少年で、親は首都メノウに出稼ぎに行っている。何ヶ月に1回しか帰ってこないため、料理、家事などをする技術を持っている。髪は赤茶色だったが、最近染めて赤色に変わった。目は暗い青色で、視力はあまりよくない。ファッションにも一応気を使っているらしく、腰から胸の近くまで、太さや長さが違う何本ものベルトを巻きつけている。10歳の時暴漢に襲われ、それがきっかけでアクシオンを親からもらった。
趣味は武器や車両の改造で、嫌いな物は爬虫類。

レオン:本名レオン・サージェスト。出身地はメノウの22歳。新世界発掘隊の上級隊員で、第3号採掘地区の監督をしている。髪は金髪で、青色の目をしている。愛銃は弾を自動装填する小型の銃『シルバーホーク』で、趣味で銀に塗っている。
趣味は料理で、嫌いな物は泥。

マックス:本名マックス・グレイブ。出身地は不明で、年齢は50歳前後と思われる。新世界発掘隊の総司令隊長で、髪は赤茶色、目は青色である。作品中にはまだ出ていないが、愛銃は小型ミサイルを発射する2mほどのバズーカ『マックススペシャルG』のようだ。
趣味はドライブで、嫌いな物は高い所。

続きは次の用語解説で書きます。では5章スタートです。



 グラッグが目を開けると、あたりは明るくなっていた。

「しまった!」

ついつい寝てしまったことに気づき、右と左を見た。誰もいなかった。

「まさか捕まったのか・・・?」

ミストを探そうとして立ち上がると、

「やっと起きたね」

岩の左から声がしたので振り向くと、ミストが立っていた。さっきまで岩の後ろにいたようだ。

「まったく・・・あの虫達が襲ってくるかもしれないのに、のんきねぇ・・・」

ミストがあきれて言った。グラッグは立ち上がって、ミストの方を見た。

「ごめんごめん。ところで、何か武器はあるの?」

グラッグが聞くと、ミストは背中に手をまわし、担いでいた銃を前に出した。

 その銃は、1m前後ある、一見して散弾銃のように見えたが、親指を置く所に長い棒がついていた。

「この銃は・・・?」

グラッグが聞くと、

「プロミネンスって知ってるかしら?じつはこの銃は、そのプロミネンスの最新タイプなの。」

ミストがその長銃プロミネンスを両手で持って言った。

「今でもプロミネンスってあったんだ・・・」

グラッグは興味深い目でプロミネンスを見ながら言った。

「ブリスター相手にプロミネンスは必要ないから、ほんとはこの銃はないんだけど・・・ジムさんが昔使ってたプロミネンスに、圧縮オイルを使えるようにしたり、携帯するために折りたためるように改造してくれたってわけ。」

ミストはそう説明して、真ん中らへんで折った。長い銃口の先は引き金の近くまで折りたためた。

「まあ私はこの銃のことを『コロナ』って呼んでるんだけどね。」

ミストは携帯用に折りたたんだ銃を、腰につけた灰色のウェストポーチに入れて言った。扱い慣れたその様子をグラッグは見ながら、街の方を見た。あちこちから黒い煙があがっていた。

「まさか街にまであの虫が・・・?」

グラッグが頭によぎった悪い予感を口に出すと、ミストは彼の横まで歩いて、

「そうみたいね。で、どうするの?2人で虫の巣になったあの街に殴りこむの?」

冷静な口調で言った。グラッグはアクシオンをホルスターから抜いた。

「・・・いいや、やめとこう。ひとまず、ドリルまで行っていい?ドリルのところに、助けてくれそうな人がいるはずだから。」

そう彼が言うとミストはふっとため息をはいて、

「そうだと思った。行きましょ。」

コロナを取り出し、一瞬で組み立てて両手で持ち、黒煙を頂上から噴き上げるドリルのほうへ走り出した。グラッグもそれに続いた。

 道の途中に、地面に前をめりこませたエアビーグルがあった。フロントガラスが砕け散っていた。

「これ・・・使えそうね。私に任せて。」

ミストはそう言うとコロナを背中に担いで、空いている方のドアから操縦席に入った。その中にある、虫に食い荒らされて原型のない新世界発掘隊の隊員の屍を割れたフロントガラスから放り出し、何か細工を始めた。5分ほどして、推進エンジンが唸りを上げながら火を地面へ噴出した。車体が再び地面よりやや上に浮いた。

「どう?すごいでしょ。」

ミストが片方のドアを開け、上体だけを出して得意気に言った。グラッグはすかさずドアに飛び乗って、血が大量についたシートに座った。操縦席に座ったミストはハンドルを右へきりながら、レバーを前へと押し出した。物凄い音と共にエアビーグルは180度ターンし、ドリルのほうへと走り出した。

 ドリル付近の、車両庫にエアビーグルをとめ、二人は地上に降りた。すると、ドリルの開けた穴のまわりの様子がよくわかった。

 穴のまわりは、処刑場ともいえる場所となっていた。頭のない死体や五体がばらばらになっている人間の残骸などが散らばっていた。近くに立っていたテントはすべて破かれ、一つに近づいてみると中に赤い肉の塊らしきものがいくつかちらばっていた。

「これはひどいな・・・」

グラッグが頬を伝う汗を腕で拭きながら言った。いたるところに、血の匂いが染み付いていた。ミストも眉間にしわをよせながらあたりを眺めていた。と、その時、

「ん・・・?」

ミストが目を見開いて言った。グラッグも彼女の見ている方向を見ると、一つの壊れたテントの前に、立っている人のような影があった。

「まだ生きてる人がいるみたいね。行きましょ!」

ミストの促しにグラッグは頷いて、その方向へと走った。

 ある程度近づくと、その人影は振り向いた。顔はよく見えないが、その人影から、

「あ・・・ああっ・・・」

声の低い、うめき声が聞こえた。二人は足を止めた。するとその人影から、触手が動く音が聞こえた。

「やっぱりな・・・」

グラッグは希望が絶たれたことに悲しみを持ちつつ、アクシオンを構えた。その時、上空の太陽をさえぎっていた雲が動いて、陽光がその人影を照らした。

「あ・・・あなたは・・・」

グラッグがぴったりと狙っていた、アクシオンが震えた。それと同時に彼はそう呟いた。その人影は、あの青年隊員、レオンだった物だった。

「伏せて!」

ミストが叫んで、グラッグははっと我に返って伏せた。彼のすぐ上を、たくさんの人の頭蓋骨や肋骨を鎧のようにつけた巨大な右腕が通った。当たれば一瞬で首が吹き飛んでいただろう。

「危ない・・・」

グラッグは通り越した死の鎌と言える巨腕を見ながら冷や汗をふいた。レオンの下半身は生前の彼の物のままだが、胸は皮膚が破れ、中の肋骨をも砕いて、6つの目を光らせる異形の虫の頭部が出ていた。左手は、血で真赤に染まっていた。顔は口を開いて、制帽や頬に銃弾の当たった後があった。皮膚に空いた穴からは触手が出て、何かを掴もうと動いていた。

「なんで・・・なんでこんなことに!」

グラッグが前に立つ、虫によって捕食の道具に変えられた優しい青年へ叫んだ。そして、左腰のホルスターから、ジムにもらった長銃を抜いた。一瞬で虫の6つの目の中心に狙いをつけ、撃った。くぐもった爆発音と共に、狙いと同じ場所に金色の弾丸がつきささって、弾丸の最後部のみが見えていた。レオンの体全体が一歩下がった瞬間、弾丸が内部から爆発した。

「うあ・・・あっ・・・!」

レオンの、苦痛に苦しむ声が爆発音と共に聞こえた。グラッグは、顔をそらしながら近くの岩へ転がった。横を見ると、頭蓋骨の破片や、炎に焼かれる内蔵が転がっていくのが見えた。

 何も飛んでこなくなって、グラッグは岩から顔を出した。すると、仰向けにレオンが倒れていた。胸の部分は肉が焼け焦げ、虫の緑色の血が顔についていた。

「・・・」

彼は何も言わずにレオンの屍の前にしゃがみ、両手をあわせた。鎮魂の祈りの姿勢だった。爆発の時反対側に隠れていたミストも出てきて、同じことをした。涙をふいてグラッグが立ち上がると、レオンのえぐられた胸の中から、何かが這い出てきた。

「なんだ・・・?」

グラッグがしゃがもうとすると、ミストは後ろへ跳んでコロナを構えた。そして、彼の胸へと炎を放射した。

「熱っ!」

思わずグラッグは離れた。プロミネンス特有の、濃いオレンジ色の炎に焼かれる死体の中で、何か別の物が燃えていた。

「あれはあの虫の幼虫よ。どうやらさっきの虫は、人間の中に卵を産みつけて、餌として盾にした人間や他の人間を食べさせながら子孫を増やしてたみたいね。」

ミストがコロナを両手で持って引き金を引きながら言った。グラッグには、それが現実だとは思えなかった。地面に膝をついて、うつろな目でその様子を眺めていた。



 第5章終了です。
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by jwpwm424 | 2007-04-07 11:24 | オリジナル1『呪われた都市』