受験のため仮引退中でしたが、合格したので復帰しました。小説をはじめとしメイプル記事も更新されます。


by jwpwm424

『重なる世界』 第1章―3

第1章の三区切り目です。

ようやく主人公の名前判明っていうか物語がスタート。

伏線しかけまくりっ!








 「―――から、殺すのは―――だと思う。だって―――」
 「でもそれじゃあ、その子は――――――なるんだよ?」
 「うっ・・・そ、そうだけど! それで―――――だよ!? だから――たりなんて、そんなのはただの殺人だよ!!」
 「・・・・・・ん・・・な、に・・・?」
 なんだかいつも以上に耳に響く声が聞こえる。・・・ああ、他に音が聞こえないだから、かな。
 「あっ・・・とにかく、さっき話した事でいくから」
 よくわからないことを言う声・・・これ、さっきの大声と同じ声、だよね・・・男の子、みたいだけど・・・
 なんだか眠いな・・・今、何時だったっけ・・・でも、起きないと、だめな気がするから・・・
 「・・・大丈夫かい?」
 明かりのついてない部屋の天井を背景に見えたのは、白髪のおばあさんの心配そうな顔。
 あれ? この人、誰? 見たことないはずだけど・・・・・・。それになんだかすごくケガしてる。皺のあんまりない顔と白い髪に、乾いた血がこびりついてる・・・
 「よかった・・・どこか苦しいとか、ないかい?」
 「え、いや・・・ない、けど・・・」
 確かに苦しくはないけど、なんだか頭がぼーっとする。体も、さっき寝てたからだと思うけどだるくて・・・なんだかびりびり痺れてるような気がする。
 「えっと、ここ・・・どこ、なの?」
 「ばあちゃんの家だよ」
 どこかから、ちょっと高い男の子の声が聞こえた。ギシ、ギシと床が軋む音が近づいてきて、
 「君が倒れてたところのすぐ近く。・・・もう警察はいないし『邪気』はないから、安心して」
 おばあさんの反対側から、11か12歳ぐらいの男の子が顔を出した。ぼさぼさの赤茶色っぽい癖毛、11歳にはちょっと似合わないような疲れた顔、そして・・・
 「あれ? 目が・・・」
 気のせいかな・・・瞳に色がない。虹彩だっけ?あそこが黒じゃなくて、銀色に見えなくもない白色。なんかちょっと怖い。それにどうしてかはわからないけど・・・頭に白いファーのついたカチューシャ(かなぁ? でも普通カチューシャにファーなんてつけないと思うけど・・・)をつけてる。実は女の子だったり? 女の子って言われてもあんまり違和感なさそう・・・
 「ああ、僕は白色に変えられたんだ。後は牙とか爪とか、耳もそう」
 そう言って手(これも白いファーが肌が見えないぐらいついてる・・・ファーっていうより、本物の動物の毛皮みたい)で頭のカチューシャを、髪をかき上げるようにかき上げた。ちょっと色の濃い毛がその内側にある。まるで犬の耳みたい・・・
 「え、まさかそれ、耳、なの・・・?」
 ちょ、何変なこと聞いてるの私。
 「うん、そうだよ。ほら」
 当たり前のようにそう言って、男の子は顔の横の髪をかき上げた。耳があるはずの所は、ちょっと皮膚が出っ張ってるだけで何もない。斬られた(切った)痕もない・・・まるで元々なかったみたい。・・・ってことは、まさか、まさかと思うけどこの動物の耳みたいなのが、この男の子の耳? じゃあ手も本物なの・・・ってそんなわけ
 「今は私も見慣れてしまったよ。最初は驚いたけどね・・・。君も今からすごく驚くと思うけど、しっかり、焦らずに・・・」
 私の思考がその言葉によって一瞬で吹き飛んだ。
 「ちょ、ちょっと待って。驚くってどういう・・・」
 言葉を遮って言うと、
 「ばあちゃん! そんなの」
 「・・・こうして、伝えておいたほうがいいんだよ。・・・耳を触ってみなさい」
 またさっきのように、男の子とおばあさんの口論?が始まった。よくわからないけど(何か嫌な予感もするけど)、とりあえず、耳を・・・
 「・・・あれ?」
 ちょっと骨の出っ張りがあるだけで、耳がない。・・・・・・あれ? って、こ、と、は・・・
 そっとそこから頭の上に向かって手で撫でた。しばらく髪のさらさらした感触が続いて・・・手にぬいぐるみみたいにふわふわした物が当たった。
 え? 何? この出っ張ったもの?
 「・・・これで見てみなさい」
 おばあさんから手鏡を受け取って、覗きこんだ。


 そこに映っていたのは私とすごく似た、別の人・・・いや、人じゃない。人に近い何か。


 まず目に入るのは、血や煤で汚れた黒髪からひょっこり突き出た、薄茶色の耳。二等辺三角形に少し近い形をした、猫の耳。本物の猫の耳とは、大きさが顔と釣り合うぐらいになっていること以外は全く同じ。ふさふさの薄茶色の毛で覆われ、内側の毛は少し色が白に近い。
 次に、青色の瞳が目立つ。ただ色が青なだけじゃない。まるで猫の瞳みたい・・・というか、目つきが少し変わって猫の瞳に見える。
 そして、首を半分覆うぐらいの金属ともプラスチックとも見える首輪。真ん中に六角形の無色の宝石がはまっている。なんだか宝石はオモチャっぽく見えなくもないけど、そう見せかけてるだけですごく高価な宝石って見える気もする。
 それと・・・手鏡を両手で掴む、小さくて、でもとても強そうな何かを感じる手。全体的に丸っこい形の、私の知っている手の半分ぐらいの長さしかない指。その指から生えているのは、刃の切っ先のような真黒い爪。人間の爪と違って、指の先から生えている。オレンジの光が、丸く歪んで鋭く反射されている。
 「・・・・・・っふふふ、これが、私だって、言うの?」
 私は半身だけ起き上がった。木目の浮いたテーブルと古そうな色の壁が見える。
 「こんな、ふざけた姿の、こんな、猫みたいな耳のついた人間が、私だって言うの?」
 「あ、えっと・・・ばあちゃん! だから・・・」
 「何? 私に何をしたの? あんたが犬で私が猫で、とかやりたかったの?」
 「いや僕は犬じゃ・・・」
 ガタン、と下の方から音がした。でも何の音かわからない。いつの間にか手には刀がある。五本の黒い刃の刀。
 「あんたたちでしょ? 私を猫に変えたの。何? このちっちゃい手は? 何? このオモチャみたいな首輪は? 何? この・・・・・・ふざけた姿はッ!」
 ヒュッ、と風を切る音が。半秒遅れて呻くような悲鳴が。
 鈍い光を反射する血と、鋭く光を反射する長くて黒い刃が目の前に見えた。後ろには胸を押さえる白髪の人。口が動いたように見えた気がした。
 「ッ・・・落ち着いてっ! 僕たちのせい・・・じゃない! 邪気のせいだよ!」
 男の子の焦った声が聞こえる。気のせいか途中で少し、ためらったような。
 「きみは・・・偶然邪気に触れて、化け物にされた。僕たちもそう。だからそうやって誰かを恨まないで。恨むなら」
 「は? 私が、化け、物?」
 刀に見えた物は、爪だった。右手から長く伸びた爪。さっきは先しか見えてなかった爪。人間は絶対に爪を伸び縮みさせたりなんて、出来ない。
 「そ、そう・・・私、化け物にされたんだ・・・・・・そっかー・・・そっか化け物か・・・」
 カン! と細い金属同士がぶつかる音が聞こえて、右肩が少し震える。十本の長い刃を、血色の爪で受け止める男の子がぼんやり見えた。
 ―――近寄らないで。・・・・・・化け物。
 どこからか、さっき聞いた声が聞こえる。
 「カエルじゃないなら何でもいいとでも思ったの? 人間の姿がある程度あるなら化け物でもいいと思ったの!?」
 刃が動いて、また血の落ちた髪の前で受け止められる。何か砂嵐みたいな音が聞こえた。
 「何が偶然よ!! あんたたちが仕組んだんでしょ!? 化け物のあんたたちが、私を殺すために!!」
 「ち、違う! 本当に」
 腹を蹴り飛ばして、肩口から一気に斬り裂く。大きく血が舞った。
 「殺してやる! あんたたちが間違って与えた化け物の力で、絶対殺す!! 殺して、血を」
 「―――やくっ!」
 首に何か巻きついて、途切れた声が聞こえた気がした。
 こつんと足に小石が当たった。
 こつんこつんと今度は胸に当たる。
 こつんこつんこつんと―――
 眩しい光が前でちかちかすごい早さで点滅している。最初は痛くなかったのに、少しずつ針で刺されるみたいに痛くなって、
 「あっ・・・」
 何かが体から抜ける気がした・・・途端に腕が重くなって、膝をつく。体のあちこちがぎしぎし痛い。下を見ると、シャツの黒の上に濃い赤の模様がいくつも穿たれていた。私の影に、腕の太い人影が重なっていた。
 「・・・・・・ごめん」
 それは私に向けられた言葉じゃない気がした。
 さっきよりだいぶはっきり見える男の子が近づいてくる。片手に持っているのは、薄く煙が立っているフルオート式アサルトライフル。血まみれの、空っぽの弾倉が滑り落ちた。
 「え、今私・・・」
 さっきのは、何・・・? 私の意識はあったような、なかったような・・・それに、
 「撃たれた・・・よね?」
 今、何百発も撃たれたよね? でも痛みは死ぬってほど激しくないし、傷口もすごく浅い・・・模擬弾、だったのかな。



 「えっとじゃあ、今から話すから、よく聞いてて」
 それから1,2分後。さっき私が振っていた五十センチぐらいまで伸びた黒い爪(まるで刀みたいだった)をなんとか指の中に戻してから、右肩に包帯を巻いた男の子の前に私は座った。まだ体はびりびり痺れててあんまり力が入らないけど、なんとか座るぐらいはできる。おばあさんは今お茶を淹れに行ってるらしい。・・・ちなみに爪は戻れって思ったらあっけなく指の中に戻った。さっきからなんだかぼーっとしてるから、もう驚くとかそんなのを通り越してるのかもしれない。それを見てもただすごいとしか思わなかった。あの弾が本物だって言われた時も、さっき私に襲いかかってきた警察署長は私が倒したって聞いた時も同じ。
 「まず、さっき来た警察は・・・『邪』っていうものに操られてるんだ」
 箪笥とかが置いてある結構狭い室内を見回していると、男の子がそう言った。
 「じゃ? ・・・それ、何? 機械とか?」
 「機械・・・じゃないと思う。たぶん生き物だと思うんだけど、この『世界』の生き物じゃないんだ。どんな姿なのかは、僕らにもわからない」
 「違う世界? この星の生き物じゃないってこと?」
 頭がぼーっとしてるから深く考えられなかった。だからこんな質問も出来たんだと思う。
 「違う星・・・と考えてもいいかもしれないね。でも、行き来できるほど近い星・・・そんな感じだろうね」
 しゅるっと脚・・・大きな蛇の体がうねる音がして、戻ってきたおばあさんが言った。上品なシフォンスカート(血まみれ)から出る、濃緑色の蛇の体をさっき見た時はすごくびっくりしたけど・・・今はだいぶ見慣れた。
 「それで、その邪は人間を攻撃する以外に、『邪気』っていう物を使って人間を今の僕たちみたいに・・・化け物に変えるんだ」
 「化け物・・・」
 あの暗闇の中で、あの子猫から聞いた言葉。今の私は本当に化け物になっている。絶対認めたくなんかないけど、現実はそうなっているらしい。・・・あ、それなら私にへばりついてきた、黒い煙みたいなものが邪気なのかな。暗闇の色じゃない。暗闇よりもっと濃い闇の色だった。
 「で、だいたいの人はさっきの警察みたいに意識をなくして暴れちゃうんだけど・・・たまに人間の意識を保ったままいられる人がいるんだ。それが僕やばあちゃん、そして君だね」
 「じゃあ、運がよかった・・・ってこと?」
 男の子が頷いた。こんなので運がよかったって言われても・・・化け物になったって時点で運気は最悪なんだけど。いつも見ないけど今日くらいは占い見た方がよかったかな。
 「・・・とりあえず気をつけることだけど、その爪とか体には、すごい力が入ってる。だからちょっと叩いただけでも壊したり、殺したりすることもあるから、気をつけて」
 「これが・・・?」
 血が少しついたシャツの袖をめくってみる。うーん・・・どこも変わりはないんだけど。爪だって確かに刀みたいだけど、普通の刃物ぐらいだと思うんだけどな・・・
 「後、あんまり耳とかを人に見られない方がいいかもしれない。何か、帽子とかない?」
 「帽子・・・あっ」
 確かウエストポーチの中に・・・
 「これで、大丈夫かな?」
 くすんだ黒のキャスケット帽を被って、鏡を見てみる。(頭の上にある)耳は隠れたし、目の色もひさしのおかげであんまり目立たなくなってる。男の子が嬉しそうに頷いた。
 「あ、それと、爪も隠した方がいい。それは見られるとかなりまずそうだから・・・」
 「う、うん・・・これでいいかな?」
 いつも持ち歩いている止血用のタオルをグローブみたいに巻いた。指が短くなってるから、防刃の手袋と同じぐらいの大きさの即席グローブになってる。
 「後、化け物になったことは絶対に、誰にも言わないように。化け物の力も使用禁止。出来るだけ自然に、人に触らないこと以外は何一つ変わらないように過ごして。・・・わかった?」
 「う、うん・・・わかった。気をつける」
 ここでこうやってあっさり頷いたことを後悔するのは、意外とすぐ後だった。



 「あっ・・・! ちょ、ちょっと待って!」
 色々な注意を聞いて―――まだなんだかぼーっとするから全部覚えられたかわからないけど―――蛇の体のおばあさんに「気を付けて」ってかなり不安そうに言われ、なんか(失礼だけど)廃墟一歩手前な感じの家を出た時、男の子の声が後ろから聞こえた。
 「ごめん・・・最後に、一つだけいい?」
 「う、うん。いいけど・・・」
 夕焼けのせいかもしれないけど、男の子の頬は赤く見えた。あ、走って来たからかも。
 「え、えっと・・・もし、隠し続けて疲れたら、いつでもここに来て。ここなら化け物のことも話していいし、力も僕に使っていい。化け物だから・・・発散させないと、ストレスが溜まるかもしれないからね」
 「そうなんだ。うん、まあわかった」
 「え、えっと、それでね・・・・・・名前とか、聞いてもいいかな?」
 「名前? いいけど。私は・・・・・・・・・」
 ・・・・・・あれ?
 「私の名前は・・・・・・」
  どうしてだろう・・・名前が出てこない。自己紹介の時に詰まったことなんて今まで一度もなかったし、何かに名前を書くときに迷うこともなかったのに。
 あれー・・・? どうして?
 「もしかして、名前が思い出せないの?」
 さすがに声に出すのは恥ずかしいから頷くだけにした。
 「うーん・・・それじゃあ僕は、『キャット』って呼ぶよ。それでいい?」
 すごくいい名前思いついた! みたいな顔で男の子がそう言った。
 「きゃ・・・きゃっと?」
 いや確かに私は猫の一部があるけどそのまんますぎるでしょ。うーんでも他に何か・・・
 ・・・そうやって悩むこと5分。
 「うーんわかった。じゃあ今のところはそれでいい」
 他にいい名前が思いつかないし、この男の子とおばあさんとの間だけのニックネームみたいなものだから・・・ってことで私が折れた。猫の耳が私にあることは嫌だけど、猫は嫌いじゃないし。男の子がやったぁとかなり子どもっぽく喜ぶ。何歳なんだろう。
 「ただし、私はあんたのことを『ウルフ』って呼ぶ。それが条件」
 犬にしなかったのは、なんか人の名前で使うと違和感があるから。実際使ってみればわかるはず・・・だから犬と似てる狼を使ったわけ。名前負けしてる気がしないこともないけど。
 「いや、僕は名前をちゃんと覚えてるんだから名前で・・・」
 「だめ。私が譲歩したんだから、あんただって譲歩しなさい」
 そう言って私はぐいっと顔を近づけた。男の子の顔がはっきり見える。この茶色は染めたわけじゃなくて元々みたい。鼻は小さくて、唇の色もなんだか薄い。で、頬はやっぱり赤い。なんだか赤が濃くなってる気がする。どうしたんだろう。
 男の子はえーとかあーとか目を逸らしながら言った後、
 「わ、わかった。それでいいよ。・・・じゃあよろしく、キャット」
 「よろしく、ウルフ」
 分厚い白っぽい毛に覆われた手と私は握手した。ウルフの血色の爪と私の黒い爪が、夕陽を反射して光った。


 こうして私は、絶対揺るがされないと思っていたもの・・・『自分は人間である』ということすら壊され、その頃の『日常』をあまりにもあっけなく、わけわかんない邪って化け物から壊された・・・ってわけ。一寸先は闇って言うけど、これはいくら何でも・・・闇すぎるでしょ・・・。実際、壊した大本は闇みたいな邪気だったりするんだけど。

 そんなふうに考えていたから、この後の生活こそが本当に闇に覆われていたっていう可能性なんて、考えもしなかった。考えられるわけないし。
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by jwpwm424 | 2009-08-19 21:31 | オリジナル2『重なる世界』